●●●●●●●●●●●●●●11附置研究所原爆放射線医科学研究所ゲノム科学などの最先端の基礎研究から、再生医療など高度な臨床展開に至るまで「放射線の人体影響」の総合的な研究を推進しています。被爆者の医療を半世紀にわたって行う一方、放射線災害・医科学領域の研究拠点として、全国の研究者・医師と活発な共同研究を進めています。ぜ受精卵が分裂すると2つの受精卵になるのではなく、どんどん違う種類の細胞が生まれ大人になっていくのか? 私が発生(生物が卵から大人へと成長していく過程のこと)に興味を持ったのは高校生の頃でした。そのような疑問はしばらく忘れていたのですが、大学の発生生物学の講義を受け、高校生の頃に浮かんだ疑問がふつふつと思い出され、発生生物学の研究室の門を叩きました。生物の教科書でもおなじみのキイロショウジョウバエを用いて、神経細胞の形が決まる過程ではどのような遺伝子が関わっているのか明らかにすることを目指していました。数千匹のショウジョウバエの脳を解剖し、神経細胞の形態を観察する日々を送りました。そして思ってもいなかった遺伝子が神経細胞の形作りに関わるという結果を得て論文として発表することができました。 大学院を卒業後は、遺伝子だけでなく環境因子にも着目して研究を進めています。生物の発生は、それぞれの生物が持っている遺伝情報だけでなく、育った環境にも依存します。みなさんの周りにも双子(一卵性双生児)の方がいるかもしれません。彼らは同一の遺伝情報を持っていますが、全く同じ人はいないと思います。それは、生育環境が形態や性質などにも影響を与えるためです。 環境がどのように生物の発生に影響しているのか明らかにするために、現在は線虫Pristionchus pacificusをモデルとして研究しています。この線虫は体長1mm程度で、面白いことに口の形が2種類存在します。どちらの口の形になるかは、線虫がどのような環境で育ってきたかによって決まります。特に私理学部大学院統合生命科学研究科 准教授は発生過程での光環境に興味を持って研究を進めています。顕微鏡による観察だけでなく、ゲノム編集技術やバイオインフォマティクスなど新しい手法も積極的に活用して研究を進めています。 生育過程の環境は、発生に影響を与えるだけでなく、大人になってからの病気のなりやすさにも影響することが知られています。胎児や幼児期での環境が、どのように病気に影響しているのかはまだまだ不明確な部分が多いです。線虫の研究が、そのような問題に関する基礎的な知見につながると期待しています。 大学は学び放題という素晴らしい環境だと思います。さまざまな人と出会い知識を得る中で、自身が感じた疑問や関心を大切にして成長してほしいと思います。線虫Pristionchus pacificusの頭部の電子顕微鏡写真(広島大学の共同実験施設で撮影)。環境によって口の形が幅広型(左)と狭小型(右)に分かれる。キイロショウジョウバエも線虫と同様に世代時間が短く、遺伝実験に適した実験動物。炭酸ガスで麻酔をかけて作業を行う。特定の神経細胞を蛍光タンパク質(赤色)で標識した線虫Pristionchus pacificusの顕微鏡写真。外界を感知する神経細胞が口の先まで伸びていることがわかる。「最新の知見を学び、論文を執筆するためには、英語は欠かせません。また生物学と情報学が融合したバイオインフォマティクスにはプログラミングも必須で、学生たちと一緒に私も勉強中です」と語る奥村准教授。ナノデバイス研究所高等教育研究開発センター情報メディア教育研究センター自然科学研究支援開発センター森戸国際高等教育学院保健管理センター平和センター環境安全センター総合博物館北京研究センター宇宙科学センター外国語教育研究センター文書館スポーツセンター学内共同教育研究施設OKUMURA MISAKO専門研究分野発生生物学、神経科学、遺伝学奥村 美紗子第一線の研究を支える、 環境と遺伝子が織りなす生物の形作りを理解したい。な
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