HU-plus (vol.15) 2021年度5月号
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鏡に魅せられました。「顕微鏡の始祖」と呼ばれるレーウェンフックと、「光の魔術師」フェルメールは同い年で同郷なんです。留学先のニューヨークでフェルメールの絵を初めて見た時そのことを思い出し、フェルメールの生きざまにも興味が出てきたんです。越智:レーウェンフックとフェルメールの関係を思いながら、人生をたどるというイメージでしょうか。福岡:そうですね。2人は1632年、オランダのデルフトという小さい町に生まれました。生家はごく近く、一緒に顕微鏡をのぞいていたかもしれないし、互いに影響を受け合ったかもしれない、などと考えると時空を超えたロマンを感じます。フェルメール作品は当時調べたら37枚しかありませんでした。37は素数。特別な数字なんですね。全部見るしかないと思いました。以後20年くらいかかって、全世界の所蔵美術館を訪ね、全作品を見て、フェルメールの人生を私なりに体験したのです。越智:アートとサイエンスの間に共通点はありますか?福岡:レオナルド・ダ・ヴィンチなどを考えても、芸術家と科学者は近い存在です。アウトプットの方法は違っても、「この世界はなんだろう」「人間はなんだろう」と、WHYにチャレンジした人たちです。今でこそ文系と理系に分かれ、科学と芸術もすっかり別のもののように見られていますが、根本は同じで、共通した思想があると思います。現代の学生の皆さんも、学部や学科に閉じこもらず、いろんな分野を渡り歩きながら広い視点を持つべきだと思います。越智:近年、世間から学問や科学技術の成果をすぐに求められる傾向があると感じています。スピードは重要かもしれませんが、今こそ長期的な目線で、多様で柔軟な発想が必要ではないでしょうか。日本の科学技術の将来については、どのようにお考えですか。福岡:選択と集中の害を感じます。本当の意味で科学を振興するには、まず狭く閉鎖的な「タコつぼ化」をやめることです。そしてもう一つ。資金や人材などを広く浅くまいて、新しい萌芽がどこに現れても育つようにすることが必要だと思います。越智:同感です。「何もないかもしれない」という所にも、常に種をまいて水を与えることが大切です。そうしないと新しい芽は出ません。これからも、繰り返し訴えていきたいですね。最後に、若者への好きを続けることが大切ノアザミ昆虫写真:前原甲虫コレクション(総合博物館)ハラグロオオテントウアサギマダラキャンパスで見つけるセンス・オブ・ワンダー! 小さいころ、もうすぐ咲きそうな花のつぼみにワクワクしたり、毎年やってくる渡り鳥たちをまだかな?とドキドキしながら待った記憶はないですか?米国の生物学者レイチェル・カーソンは、美しいもの、未知なもの、神秘的なものに目を見張る感性を「センス・オブ・ワンダー」と名付けました。大人になると、慌ただしい日常に追われて余裕がなくなり、いつしかそういった感性を忘れてしまいがちです。私たちの周りには、ワクワク・ドキドキさせてくれる自然があります。 とりわけ、東京ドーム53個分の広大な敷地を有する東広島キャンパスでは、70種類以上の絶滅危惧種を含むたくさんの動植物が生息しています。その多様性は全国屈指です。総合博物館により整備された自然散策道「発見の小径」では、渓流や湿地、池、ビオトープを巡りながら四季折々の自然の移り変わりを観察することができます。キャンパスを散策してみれば、あなたの中で眠っているセンス・オブ・ワンダーが呼び覚まされ、日常がこれまでよりもちょっと豊かなものになるかもしれません。メッセージをお願いします。福岡:自分の好きなものが1つあって、好きであり続ければ、それがずっと支えてくれるし、豊かな人生を歩ませてくれます。私自身の人生を振り返ってそう感じます。自分の原点センス・オブ・ワンダーを大切にして、「好きを続ける」ことを実践してください。越智:本日はありがとうございました。https://www.hiroshima-u.ac.jp/2020covid-19新型コロナウイルス感染対策に伴うキャンパス立ち入りに関する最新情報はこちらをご確認ください。広島大学デジタル博物館をご存じですか?ウェブサイトから広島大学の広大な自然がもたらすロマンに触れることができます!・ 広島大学が保有する植物・化石・岩石・鉱物などの 学術標本資料を紹介するデジタル自然史博物館・ 東広島キャンパスの遺跡や遺物を紹介する文化財博物館・ 四季折々のキャンパス内の植物や野生動物の写真 などリアルタイムでご覧になれます!https://www.digital-museum.hiroshima-u.ac.jpそうはいっても時間がない、東広島キャンパスは遠いよ、というあなたへ。06Hiroshima University Magazine

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