HU-plus (vol.15) 2021年度5月号
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生物学者・福岡伸一氏と語る越智:ベストセラー『生物と無生物のあいだ』をはじめとした多くの著書があり、中にはウイルスも登場します。先生のお立場から「ウィズコロナ」をどうお考えですか?福岡:長い歴史の中で、人間の体は多くのウイルスと戦いながら生き延び、共存してきました。今回の新型コロナウイルスもやがては人間とウイルスとで平衡が成り立ち、インフルエンザのような常在的、または季節的なものに変わっていくと思います。過剰に反応するのではなく、「正しく畏れる」「正しく恐れ過ぎない」というように、人間の側が変わっていく必要があると思います。越智:人間側の捉え方の問題でもありますね。先生の生物や生命への興味は、何がきっかけでしたか。福岡:子どものころは内向的で、人間の友達より虫に興味を持っていました。ある日、両親が顕微鏡を買ってくれたのです。友達と遊ぶきっかけにしてほしかったようですが、私は顕微鏡のとりこになって、一層昆虫に夢中になってしまいました。自然の不思議さ、精妙さに捕まっていましたね。ルリボシカミキリの色やアゲハチョウのデザインなど、本当に美しいと思います。越智:昆虫への興味が原体験なのですね。福岡:変化(へんげ)にも心を奪われていました。イモムシがある日、急にサナギに生物学者福岡 伸一ふくおか・しんいち/1959年東京生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授などを経て、現在、青山学院大学教授・米国ロックフェラー大学客員研究者。サントリー学芸賞を受賞し、85万部を超えるベストセラーとなった『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)、『動的平衡』(木楽舎)など、“生命とは何か”を動的平衡論から問い直した著作を数多く発表。センス・オブ・ワンダーを忘れず、原点に立ち返る。今なぜ、WHYが大切な コロナを恐れ過ぎない青山学院大学で教壇に立ち、ロックフェラー大学客員研究者でもある生物学者・福岡伸一氏と広島大学の越智光夫学長が、学問や日本の科学技術に対する考えなどを語り合いました。生物学者福岡 伸一氏越智 光夫広島大学 学長03

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