谷田 創 (たにだ はじめ)教授大学院統合生命科学研究科附属瀬戸内圏フィールド科学教育研究センターキーワード:関係性、共生、野生動物、ペット、家畜、動物介在教育人数:学部生5人、大学院生2人、研究生1人、教員2人DATA 「私たちの世界は、人と動物がおのおので存在するのではなく、両者が共存することで成立しているのです」と、“人と動物の関係性”について研究する谷田教授は言う。さまざまな動物との関係性を調べ、人が動物に及ぼす影響を明らかにすることで、動物福祉の向上とともに人と動物の共生のあり方を提案する。 特定の動物種に限らず、ペットや野生動物、家畜、動物園動物など、あらゆる動物と人の関係性が研究対象だ。メンバーは実際に地域や動物園、無人島などのフィールドを訪れ、動物の行動観察や動物に関わる人へのインタビューを行う。「研究室から一歩外に出れば、そこはすべて私たちの研究フィールドです」。問題の本当の原因は何なのか、現場で初めて分かることも多い。例えば野良猫の問題は、人と猫ではなく、人同士(餌をやる人と被害を受ける人)の問題だった。こうした研究を糸口に、動物にまつわる地域社会の問題解決を目指す。 「研究室のメンバーは、もちろん動物好き。物静かな雰囲気ですが、熱い思いを胸に秘めています。動物との関わり方を改善していくため、地道にコツコツと研究を進めていきたいですね」 動物に対する深い理解を育むため、生き物に触れる機会を提供する「動物介在教育」も行う。研究室のある西条ステーション(農場)は、文部科学省の教育関係共同利用拠点に認定され、乳牛や羊、ヤギなど計100頭以上を飼育している。ここに全国から学生が集まり、3泊4日で家畜の飼育を体験。食べ物の源である命に触れ、人だけでは生きられないことを学ぶのが狙いだ。 また、保育系の大学生や幼稚園児を対象に、ウサギや鳥など小動物の正しい飼育方法を指導したり、生き物との触れ合いの場を設けたりしている。幼少期に動物と触れ合う経験はとても重要だと考えているからだ。「どれだけ科学が発達しても、生き物との共生なくして、持続的な社会の実現は不可能です。子どもたちが大人になったとき、生き物への配慮を忘れず、より良い関係性を築ける社会であってほしい」と谷田教授は願う。(左から妹尾助教、谷田教授)生き物と触れ合う教育活動も人と動物のより良い 関係性について考える14team▲ WEBサイト16Hiroshima University Magazine
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