HU-plus (vol.14) 2021年度1月号
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越智:先生は幼いころどのようなお子さんでしたか。吉野:ごく一般的な子どもだったと思います。生まれは大阪府吹田市で、緑豊かな環境で育ちました。幼い頃から自然に接する機会が多くありましたね。越智:化学に興味を持ったのは小学4年生だそうですが、きっかけは何だったのでしょうか。吉野:担任の先生からマイケル・ファラ越智:科学が発達し便利になったことで環境が変化し、新しい感染症が生まれてしまうこともあると思います。先生が研究されているリチウムイオン電池など地球環境を守る視点での科学の発展は望ましいですが、行き過ぎた開発は問題があります。吉野:おっしゃる通りです。このコロナ禍で感染拡大防止と経済のバランスをとらなければいけないのと同じですね。これからの科学は地球環境問題の解決にいかに貢献するかが大切です。越智:この間に新たなチャレンジは何かされましたか。吉野:文部科学省などを通して、社会へさまざまなメッセージを発信しました。残念ながら感染症は私の専門分野外なので、ノーベル医学・生理学賞を受賞された山中伸弥先生のように具体的な提言はできませんでしたが。越智:ノーベル賞受賞者の方からのメッセージは皆さん重く受け止めますので、今後もぜひ続けていただきたいです。旭化成株式会社名誉フェロー吉野 彰よしの・あきら/1948年生まれ。大阪府吹田市出身。京都大学工学部に入学、京都大学大学院工学研究科の修士課程を修了後、旭化成株式会社に勤務。2010年に技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター(LIBTEC)理事長に就任。2017年に旭化成株式会社名誉フェローに就任。2019年にノーベル化学賞を受賞。とがっていても良い。貪欲に経験を積む。デーの『ロウソクの科学』という本を薦められたのです。「ろうそくの炎はどうして黄色なのか」など小学生にとっては難しい内容でしたが、分かりやすく化学について教えてくれる本でした。身近にある化学現象の面白さに好奇心をくすぐられ、それからも子ども向けの科学雑誌などをよく読んでいました。越智:本を読む以外に、ご自分で実験や観察などされましたか。吉野:顕微鏡を自分で組み立てて観察をしていました。植物の葉や池の微生物などを見て、感銘を受けていましたね。越智:中学校や高校では、どのように過ごされましたか。吉野:勉強に関しては、化学が相変わらず好きでしたので、理科の成績は良かったですね。一方、音楽や美術など芸術系の科目は苦手でした。また、当時クラブ活動は盛んではなく、体を動かすことといえば、中学校のプールに泳ぎの好きな友人と集まり、タイムを計っていたくらいでしたね。一冊の本から化学の道へ5歳のころの吉野氏04Hiroshima University Magazine

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