HU-plus (vol.14) 2021年度1月号
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キーワード:地理、歴史、地形、活断層人数:学部生10人、大学院生8人、教員2人その他連携施設:広島大学総合博物館DATA熊原 康博 (くまはら やすひろ)准教授大学院人間社会科学研究科 地理学研究室REPORT潜入チーム広大(熊原准教授:左から2番目)土地の特性から人々の暮らしの歴史を読み解く防災教育や町の魅力発見にも 地理学研究室は、自然地理学と人文地理学合同の研究室だ。どちらもフィールドワークや資料で得た情報を地図に落とし込み、統合的に考察する学問だが、前者は地形や気象などの自然現象、後者は都市や文化などの人間の営みを扱う。それぞれを専門とするメンバーが一緒に調査を行い、地理学への理解を深めている。 自然地理学が専門の熊原准教授は、ヒマラヤで活断層研究を行っている。「ネパールでは2015年に大地震がありました。しかし、その原因が活断層だと理解している現地の人は少ない。地震のメカニズムや活断層の活動周期を調査・提示し、人々の防災教育に役立てたいと思っています」 土地の性質や成り立ちを明らかにする地理学は、防災・減災の基礎知識につながる学問でもある。被災の歴史やメカニズムから、将来どのような災害に遭いやすいか、そのためにどのような備えが必要か分かるからだ。「住んでいる地域の地形や地質を知ることは、将来設計をする上で重要だ」と熊原准教授は指摘する。 近年広島で起こった豪雨災害をきっかけに、地元の防災教育にも貢献している。東広島市防災教育ビデオの作成や、県内の水害碑と被災の歴史について調査を実施。水害碑の研究は、地図記号「自然災害伝承碑」の誕生につながり、国土地理院から感謝状が贈られた。  また、研究室では2020年3月に『西条地歴ウォーク』を自費出版。学生らがフィールドワークを重ね、西条の景観がどのようにつくられたかを多角的に分析した。「地形からは災害の歴史だけでなく、過去の人々が土地の特性を生かし、工夫してきた過程も読み取れます。地域の方には、ぜひガイドブックを読んで現代の暮らしの背景にある歴史を知ってもらい、地元への関心や愛着を持ってほしいですね」 今後の目標は、ローカルな研究成果を残すこと。小学校・中学校の出張授業や地域の講演会など、研究室への依頼は徐々に増えてきている。東広島の人々にとって身近な研究室となれるよう、これからも積極的に地域に役立つ研究をと意気込む。地形が語る歴史を発信し  地域にとって身近な研究室へ11team(前編)(後編)◀ 東広島市  防災教育ビデオ17

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