新久 千映漫画家さんしんきゅう・ちえ/広島大学教育学部2002年度卒業。2006年に読切作品『痛快!堀田クリニック』でデビュー。著書に『タカネの花』『ワカコ酒』など。現在、『ワカコ酒』(月刊コミックゼノン/WEBコミック ぜにょん)、『タカコさん』(WEBコミック ぜにょん)、『ねこびたし』(WEBサイト ねこねこ横丁)、『居酒屋人めぐり』(中国新聞)、『お酒バンザイ!』(レタスクラブ)を連載中。女性の一人飲みを題材にした作品『ワカコ酒』は実写ドラマ化され、大きな反響を呼んだ(現在、Season5まで放送されている)。総合科学部3年さん廣田 香Report学生広報ディレクター楽しそうに漫画のことを語られる姿がとても印象的でした。また、ほのぼのとしたお話の中からも「漫画が好き」という気持ちと、お仕事に対する熱意を感じました。学生時代に漫画を投稿し始めた新久さんのように、私も夢に向かってまずできることから挑戦してみようと思いました。 子どもの頃から漫画家になりたいと思っていました。しかし一方では、プロになるのは難しそうだとも感じており、広島大学の教育学部への進学を選択。社会科の教員を目指していましたが、教育実習が進むうちに熱意ある周囲のみんなとは違い、自分は日本史が好きなだけで教壇に立ちたいわけではないと気付きました。その時に思い出したのが、幼い頃に抱いていた夢。本当は、漫画家になりたかった。それなら、行動するしかないと、在学中から出版社への投稿を始めました。周囲から「正気なの?」と言われ、就職活動をしている同級生の中で、漫画を描き続けていました。 卒業後は、在学中に取得した医療事務の資格を生かして病院の受付事務をしながら投稿を続けました。2005年に上京し、活躍中の漫画家さんのアシスタントをする傍ら自分の作品を出版社へ持ち込み続ける日々。ついにデビューを果たすことができたのは、2006年のこと。医療事務の経験を生かした作品でした。担当の編集者の方に、何度もダメ出しをされて一晩泣き明かし、それでも折れずに「また描くか!」と奮発する。そういったことの繰り返しの末に夢を実現することができました。 『ワカコ酒』誕生のきっかけは、担当の編集者の方の一言でした。「新久さんてほんとお酒好きですよね」という何気ない会話から、構想が浮かんできて。連載を開始した頃は、女性が一人で飲むというのが、ネガティブなイメージだったのですが、主人公の親しみやすいキャラクターが読者の心をつかんだようで大きな反響がありました。一人で無口に飲んでいても、本人はすごく楽しんでいるというのが共感できたのでしょうね。さらに、作品を実写ドラマ化していただいたことは大変光栄で、試写会では感極まって号泣してしまいました。 漫画の着想を得るために工夫していることは、メモ魔になること。日常で起こった出来事や会った人の様子などちょっとしたことを書き留め、作品の中に取り入れています。人に会うのはあまり得意ではありませんが、人に会って感性をアップデートすることも大切にしています。 また、読者の皆さんからいただく、「『ワカコ酒』を読んで一人飲みを始めた」「大人になったらお酒を飲んでみたい」といった声が大きな励みになっています。自分の作品が何かを始めるきっかけになったと思うと、うれしいですね。今後も読者の皆さんに共感いただいているところは維持しながら、飽きさせないように小さな変化を重ねて、末永く愛される漫画を描き続けたいです。 後輩の皆さんでやりたいことが見つからない人もいると思いますが、まずはできることから始めることが大切です。それらがいつしか、やりがいにつながり、将来が見えてくることがあると思います。夢があるならやるしかない改めて目標と向き合い、挑戦を決意自分の作品が、何かを始める“きっかけ”になることがうれしい顔写真は非公表のため、自画像での掲載教育学部 出身20Hiroshima University Magazine
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