人々の活動を大きく制限し、行動様式の変化をもたらした新型コロナウイルス感染症。大学の授業も変化を迫られ、2020年度前期の授業はオンライン・オンデマンドでスタートしました。「輸送システム工学実験・解析法」のような工学部の実験も、その例外ではありません。 この授業では材料強度試験、梁の振動試験、物体に作用する揚力・抗力実験、浮体の運動、直流モータの制御実験、リモートセンシングによる環境計測実験、工作実習といった7つの実験課題に取り組みます。例として「梁の振動試験」では、片持ち梁(一端のみで固定された梁)を振動させ、その振る舞いを計測。特定の振動数で物体が大きく揺れる「共振」と呼ばれる現象について学びます。実験では振動数を変えながら片持ち梁を揺らし、共振が起こったときの揺れ方を計測。同時に、理論的にはどのような揺れ方になるかも計算し、実験結果と比較します。「実験値と理論値が違った場合に、なぜ差が出たかを考える。それが実験のポイントです」と語るのは、この実験課題を担当する田中義和准教授。学生にしっかり考えてもらうため、あえて誤差が出るように実験条件を設定しているといいます。 通常は学生が実際に装置を用いて計測しますが、オンラインではそれができません。そのため、教員が計測する様子を収めた動画をオンデマンドで配信し、それを見て学生が分析する形で授業が行われました。動画は丁寧な解説付きで、装置の扱い方やデータの取得・解析方法への理解を深められます。制作に力を入れたかいがあり「レポートを見ていても、通常授業と比べて理解度に大きな差はないと思います」と田中准教授は手応えを語ります。「ものに触れられないので直感的な理解が難しいのでは」といった心配もあるそうですが、学生からは「分からない部分を繰り返し見られる」「通常の実験では自分の担当箇所しか見えなかったが、動画では全体が見える」と前向きな声が寄せられています。教員にとっても、学生にとっても未経験の状況が続く昨今。それでも、広島大学の学びは止まることなく進み続けています。リモートセンシングには初めて触れたのですが、すでに学んだ知識・技術が基礎にあることを知りました。実験を通して、学びのつながりが見えてきたと感じます。学生がおすすめする広島大学の「ぶち」おもしろい講義を各回ご紹介します。工学部 3年さん田島 冴衣広大講義輸送システム工学実験・解析法実験も完全リモート対応のオンライン授業!動画コンテンツで実験手法を学び、考察力を磨くとても(広島弁)17vol.05【】Student’s Voice!コードを打ち込むと、マシンで加工が行われる。梁の振動試験の様子。担当教員:専門分野:田中 義和 准教授工学/総合工学/船舶海洋工学開講部局:科目区分:工学部専門教育(先進理工系科学研究科)工作実習では工作機器の操作に挑戦。
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