HU-plus(vol.09)2019年度5月号
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 学生時代、「伝える」ことに興味がありマスコミ業界を志望しました。当時は4大卒の女性が入社できる民間企業は少なく、広島の民放で男女同一賃金なのはたった2社。今では当たり前の男女平等にこだわり、広島テレビに入社しました。どの仕事も自分なりの成長を感じることができて幸運でした。 2015年、日本テレビ系列で初の女性技術局長に就任。技術局では、視聴者に番組を届ける放送システム全般の整備を担います。この時期は新社屋建設を控えており、新しい放送設備の検討と選定という大役を任されることになりました。歴代の技術局長は技術出身で、文系出身の私が選ばれたのは異例のことです。 会議やメーカーとの打ち合わせは専門用語ばかりで、まるで外国留学でもしたようにチンプンカンプンです。しかし、私が理解できなければ、経営層に説明して決裁を仰ぐこともできません。担当者には何度も何度も説明資料の書き直しを指示し、四苦八苦の末に決裁に至りました。文系出身の技術局長だからこそ、現場担当者と経営層の間を取り持つ通訳の役を果たせたのでしょう。新社屋移転のタイミングで技術局長を任されたのはそのような理由があったのかもしれません。 最大の危機は2018年7月の西日本豪雨災害でした。送信塔のある絵下山の道路が崩落し、電柱が倒れて停電するアクシデントが起こったのです。一瞬たりとも放送を絶やさないという使命感から、大型ヘリを手配して山頂へ予備電源用の軽油を運び、難局を乗り越えました。非常時に県民の命を守る放送を維持できるよう、知力・体力のある会社をつくりたいと痛感した出来事でした。 2018年9月23日早朝、新社屋からの放送切り替えの瞬間を迎えました。準備期間の苦労がよみがえり、感極まりました。みんなも自分もよく頑張ったと。 このように常に新しい挑戦をしていますが、その素地は大学時代に培われたと思います。毎週金曜日は研究室に教授から大学院生、学部生まで幅広い年齢層が集まり、お弁当を食べながら話しました。知見をお持ちの先生方や先輩方と語り合うことで発想の幅が広がったと感謝しています。広島大学には著名な先生がたくさんおられ、歴史の中で知見と知財が蓄積されています。中国地方のトップ大学であり、世界につながる大学だと思います。 欧米での「HIROSHIMA」の知名度は想像以上に高く、広島テレビでも自社制作番組を海外へ販売したり、インターネットを通じて世界に番組を配信したりしています。広島から世界へという姿勢は広島大学と広島テレビの共通点ではないでしょうか。今後も地元を軸に、世界に発信する魅力ある企業でありたいと思います。教育学部3年さん山下 奈那子Report学生広報ディレクター技術局長時代の苦労など、さまざまなお話を伺い、華やかなイメージが強いテレビ業界の裏には、多くの人の支えがあるということが分かりました。広島テレビの「地方から世界へ」という姿勢を聞いて、私も世界に目を向け、多くの経験をしていこうと思いました。異例の文系出身の技術局長分からないことを強みに新延 聡子広島テレビ放送 取締役さん広島大学文学部哲学科1979年度卒業大学卒業後、広島テレビに入社し、人事・総務部門に勤務。2015年から技術局長、2018年に広島テレビで初の女性取締役となり、新社屋への移転で機材関係の責任者を務めた。現在は、取締役経営戦略局長代理。広島テレビには広大出身者が多い。みんな広大出身です世界が注目するHIROSHIMAその特殊性や魅力を発信していきたい20Hiroshima University Magazine

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