HU-plus(vol.09)2019年度5月号
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教師だった父の影響で漠然と教師を目指し、広島大学の教育学部に入学しました。体育教育学専修だったので授業は体育漬け。さらに体育会バレーボール部で部活動に打ち込み、演劇とは無縁の大学生活を送っていました。大学3年の時、役者を目指して大きく方向転換するまでは。 きっかけは地元鹿児島での山田洋次監督のスタッフさんたちとの偶然の出会いです。お話しする中で、「演劇の世界で表舞台に立ってみたい」と直感しました。その後の学生生活は役者になるために、「役者とは何か」「映画はどうやって作られているのか」などを知る1年間でした。それまで演劇にはまったく接点がなかったので、友人に学内の劇団やサークルを紹介してもらって舞台を経験させてもらったり同級生とユニットを組んで芝居をしたり。学生時代に舞台に立った回数は少なかったけれど、音響、照明、脚本家も含めていろいろな方に支えられて作品は作られているんだと感じることができました。広島から東京まで青春18切符を使って自分で事務所を探すなどもしました。 役者の最大の楽しみは、いろんな役を演じて非日常を感じられるところ。人は日常生活で理性を保って生きていますが、役者はその境目を越えることができるんですよ。いろんな「普通」を知っていることは役者として役に立ちますから、これまでに無駄な経験は一つもなかったと感じています。バレーボールをやっていたことが舞台での体の使い方に生きましたし、教育実習での経験も、自分の見せ方を考えるヒントになりました。教師の役をした時には「ぴったり!」って言われたりもして。配達のアルバイトなどの経験からも手さばきとか、体さばきとか自然な型ができるのは役に立ちますね。 役者になって感じるのは、役者同士のコミュニケーションの大切さ。作品の中で対等にぶつかり合えないとシーンが成立しないので、礼儀を大切にし、会話の中で信頼関係を築けるよう意識しています。東京に出てから広島大学出身者の多さを実感。二、三歩近いところから人間関係を始められるのはいいことだなと思います。 大学の4年間では、自分の中でこうしなくちゃ、ああならなきゃという枠を決める必要はありません。常にアンテナを張って何でも吸収するつもりで学生生活を過ごしていれば、進むべき道が見えてくるのではないかと思います。枠にとらわれない自由な生き方を次世代の人たちに示せたら嬉しいです。私もです広島大学を卒業・修了後、各業界で活躍されているOB・OGの方々に学生がインタビュー。現在のお仕事と大学時代を語っていただきました。教職から一変、役者の道へ何でもありの精神で夢を見つけた枠にとらわれない、自由な生き方を広大広大学生レポ!教育学部3年さん貴船 桃佳Report学生広報ディレクター教育学部卒の俳優さんってどんな方なんだろう?と最初は思っていましたが、本当に明るく気さくな方で、取材はどことなく授業を受けているような雰囲気で進んでいきました。人生をより面白く、より楽しくするヒントを“迫田先生”から教えてもらえたように思います。迫田 孝也俳 優さん広島大学教育学部教科教育学科1999年度卒業大学卒業後、上京し、劇団STRAYDOGに約8年間在籍。三谷幸喜監督作品に多く出演。主な出演作品はNHK大河ドラマ「真田丸」「西郷どん」、鹿児島テレビ開局50周年記念ドラマ「前田正名-龍馬が託した男-」など。今後はTBS系4月期日曜劇場「集団左遷!!」、9月には舞台「愛と哀しみのシャーロック・ホームズ」への出演が控えている。ホリプロ所属。19
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