HU-plus(vol.09)2019年度5月号
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市川 貴之 研究室国内外から熱視線!エネルギー分野の最先端学問分野:エネルギー/マテリアルサイエンス(材料工学)キーワード:水素貯蔵物質/二次電池/アンモニア人数:学部生5人、大学院生15人、その他(教員・研究員など)4人その他連携施設:総合科学研究科、先端物質科学研究科02teamDATA工学研究科/自然科学研究支援開発センター サステナブル社会にシフトする上で、水素エネルギーの活用は欠かせない。そのカギを握るエネルギー貯蔵材料の研究において、市川研究室は国内外から熱い視線を集めている。 特に力を入れているのは、水素を貯める特殊な金属「水素吸蔵合金」を使った「水素昇圧システム」の研究だ。水素吸蔵合金は、水素を低圧で貯蔵する性質を持つ。これに熱を加えることで高圧の水素を発生させる技術を、世界で初めて同研究室が開発した。金属の特性を利用して、効率的に多くの水素を発生・貯蔵できる画期的なシステムだ。従来の機械式システムは騒音が発生する上、メンテナンスに高いコストがかかっており、水素ステーションの普及の障壁となっていた。新システムであれば、機械ではなく熱を利用するため静かで低コスト。さらに工場や焼却炉の排熱を再利用することも可能だ。実用化されれば、環境問題の解決、水素エネルギー社会の実現への大きな一歩となるだろう。 博士課程の学生も多いことから研究のレベルが高く、各自が異なるテーマで研究を行うことによって得られる広い視野と知見は、研究室の強みになっている。水素研究はこれから新たな市場を開拓できる分野だからこそ、「ノーベル賞受賞」を意識して取り組むほどに、メンバーの士気は高い。さらに「言いたいことが言い合える」雰囲気も大きな魅力の一つ。市川教授は学生のアイデアをできるだけ生かし、自由な考えで研究を楽しめる環境づくりを心掛けている。そのため和やかな雰囲気の中で協力関係が育まれ、良い研究成果が生まれている。 研究内容は週に1度の報告会に加え、年に2回程度開催される大報告会で共有する。留学生のメンバーも参加し、1人30分、英語で発表。普段から半分は英語で会話をしているため、海外での発表会でも言葉を気にせず、内容を磨くことができている。また学内に設立されたベンチャー企業「ハイドロラボ」に市川研究室でしかできない実験の依頼が多く集まることも、研究室全体のスキルアップにつながっている。今後は世界の研究者が「このチームに加わって一緒に研究したい」と思われるようなブランド力のあるチームを目指す。水素研究が強み。新しいエネルギー社会の中で気の置けないメンバーと共に世界から信頼されるチームへ16Hiroshima University Magazine

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