HU-plus(Vol.8)2018年12月号
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しい。「なぜキャンパスに来なければ教育が受けられないのか」「インターネットを使えば自宅で教育が受けられるのではないか」。今の時代であれば解決できる問題に対して、大学がリードをしていくことが僕は必要だと思います。国家のビジネスモデル全体を変えていく中で、教育は非常に大きな役割を担うと思いますし、一番大学に期待しているところです。越智:日本全体が活力を得るために、日本はどう変わっていくべきか、そこにおける大学の役割を考えて、広島大学では4月に情報科学部を立ち上げました。海外からもたくさんの先生に来ていただいてインターナショナルな学部にしたい。新しい血をどんどん入れていこうと思っています。サスティナブル(sustainable)ではなくてデストラクティブ(destructive)なイノベーションを起こすための何か起爆剤があればいいと思うのですが。高岡:日本の経済界や産業界は20世紀型の産業構造のままだから大変なのです。第三次産業の人口が7割を占めているのに、サービス産業が一番稼げていないのが僕は一番の問題だと思っています。経団連にもIT企業は入ってないですしね。それをうまく変えたのがアメリカで、シリコンバレーではたくさんの人が起業しました。日本はそうではないところが最大の問題だと思います。越智:これまでに印象的だった人との出会いはありますか。高岡:テニスのコーチをしていた大学時代、政治評論家の竹村健一さんのプライベートコーチを2年ほどしました。いろいろアドバイスをいただいた中に「全員一致ならやめてしまえ」という有名なフレーズが先生の本にあり、新しいものはみんなが賛成するようなアイデアではダメで、他の人も考えるから競争にならない。みんなが反対することを自分の中でどうリードして達成していくか、そういうことが非常に大事だと教えていただいて、それが自分の中で今も生きています。越智:もし別の人生を歩めるとしたらどうしたいですか。高岡:若かった頃にはその選択はありませんでしたが、起業したいと思います。今は自分の会社を作っていますが、若い時の起業はまた違うと思うので。「常に一番難しい方法を選べ」越智:大学で学生はどう学んでいくことが大切だと思われますか。高岡:自分で選んだ専門的なものをより深く学ぶことはもちろんですが、何年あるか分からない人生の中で、生まれてきたからには社会に貢献して死んでいきたいですよね。だから人生における志を見つけることをやってほしい。私は不幸にも父親を11歳で亡くして、その経験があったから人と違う選択ができました。人生において苦労はない方がいいですが、成長していく過程ではやっぱり苦労しないといけない。仕事にもいろんな道があって、みんなやさしい道を選びたがりますが、会社で私は「常に一番難しい方法を選べ」と言っています。越智:お父さまやおじいさまが亡くなった42歳を超えて思われることはありましたか。高岡:受験生応援キャンペーンが大成功した後で「やりたいことが一つできた」と思い、残された人生で自分の志をさらに広めるにはどうしたらいいかを考えました。それで日本が弱いとされるマーケティングを世間一般に広めたいと自分の会社を作りました。越智:では、座右の銘を教えてください。高岡:ネスレに入った時から聞いていた言葉で『Think Globally Act Locally(シンク・グローバリー・アクト・ローカリー)』。グローバルに考えながらも行動はローカルでやっていく、それがネスレが150年かけて190カ国で成功してきた秘訣で、自分の人生の中にも当てはまると座右の銘にしています。越智:若い人たちに読んでほしい本をご紹介いただけますか。高岡:スティーブ・ジョブズの伝記は今の時代だから読むと面白いと思います。越智:最後に若者へのメッセージをお願いします。高岡:僕らの頃に比べて、多くの不安を抱えているのが今の若い世代。大先輩として責任も感じていますし、できるだけその不安をなくせるように頑張りたいとは思っています。ただ、基本的には非常に暗い現実しか見えないし、日本も今のままではいけない。江戸時代から明治維新にかけて、そして戦後と同じくらいの大きな激変期にあるのが今。それを変えるには非常にタフな精神力と行動力が今の若い人に求められていると思います。越智:それを十分理解することが必要ですね。広島大学も全学生約15,000人ほどに対し、昨年は2,000人の海外の人を迎えました。一緒に学ぶことは海外に行くのと同じ意味があると思いますが、私はやっぱり海外に出て行くべきだと思うのです。それで昨年、800人の学生を海外に派遣しました。高岡:すごいですね。かなり多いのではないですか。越智:そう思います。文化の違いを自分がどう受け入れるか。コミュニケーション能力を高めて、今よりもステージを上げてほしいと思います。高岡:広島大学の学生は幸せですね。海外から見ると、広島は有名ですからね。越智:知名度はあります。高岡:そういった意味でも「広島から新しいものを」と期待しています。越智:今日は本当にありがとうございました。2018年5月23日 広島大学で対談第1特集◎[対談]高岡浩三氏╳越智光夫第1特集◎[対談]高岡浩三氏╳越智光夫006
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