HU-plus(Vol.8)2018年12月号
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 現在、三代目当主の中村靖富満さんは「やまだ屋」代表取締役という役職以外にも、ウッドワン美術館理事長や宮島観光協会会長なども兼務し、多様な顔を持っています。 広島大学を卒業後、実家に戻り生産や配送、売上管理プログラムの作成などひと通りの業務を経験。「40歳で社長に就任した頃、それまでの家業から企業へ、事業規模が急激に変化するときでした。社内規定の整備から取り組み、今までの仕事のあり方を少しずつ、時代に合った姿に変えていきました」と、シフトチェンジを行った当時の大変さを語りました。 やまだ屋の主力商品である「もみじ饅頭」は、1907年に宮島で生まれます。それから約30年後の1932年、やまだ屋は製造元として店舗を構え創業。以来今日まで、伝統を守り続けています。 「学生時代、こんなことがありました。こしあんが当たり前だったもみじ饅頭に、ある店がチーズをあん代わりに入れた『チーズもみじ』を販売しました。画期的な発想でしたが、どの店も最初は、昔ながらの味にプライドを持っていたため否定的でした。しかし、チーズもみじは大好評を博し、結果としてお客さまの選択肢と層を広げ、業界全体の売上アップにつながったのです」。このことを教訓に、中村社長は常に『お客さま目線』で考えることを心掛け、『一つ一つの小さな饅頭に思いを込めて』の理念の下に、顧客ニーズに沿った商品開発を進めています。 大学時代は、食品系コースの授業で菌の検査などの実習を受け、衛生管理の意識を徹底して培ったそうです。食の安全と安心に注目が集まり始めた8年前、廿日市市に生産工場『おおのファクトリー』を完成させ、生産から管理までを一本化。新たに品質管理室も設け、後輩である広大生物生産学部の卒業生2人も加わって、日々厳しい目で管理業務を行っています。 中村社長は「おいしい商品を作るには、味だけではなく正しい品質表示も価値基準の一つ。おおのファクトリーでは、現代の健康志向に配慮して、もみじ饅頭の小麦粉の粉末が、空気を介して他商品の原料になる餅粉の中へ混ざらないよう部屋を仕切って生産しています。アレルギーの人が多いので、デリケートな配慮に万全を期しています」と胸を張ります。確かな品質に裏付けられたブランド力が、お客さまとの良い信頼関係につながっているそうです。 最後に学生へのメッセージをいただきました。「もともと広島には、日本一・世界一のものづくりをけん引した土壌があります。近年は、二つの世界遺産を中心にインバウンドなどの観光事業も活発化し、世界に通用する人材を輩出できる可能性が広がってきました。学部で学んだことやアルバイトで経験したこと、特に仲間とのネットワークは今後の人生の貴重な宝。私自身、財産でもあります。広大での日々を大切に、将来に役立ててください」022ええね!広大学生広報ディレクターに「価値観が変わっていく中で、留学生が広大の中で学ぶのは広大にとってもいいこと」と激励するおおのファクトリーはガラス張りで、工場で作業する様子が「早瀬庵」ロビーから手に取るように見えるおおのファクトリーに併設する売店「早瀬庵」。人気商品のブルーベリーや昔ながらのこしあんが入ったもみじ饅頭などが並び、地域の人たちが気軽に立ち寄っていく022

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