HU-plus(Vol.8)2018年12月号
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AABQ趣味は何ですか?A学生時代やっていた弓道と、自宅庭でのガーデニング、料理Q子どもの頃の夢は?A近くに天ぷら屋があり、なぜか天ぷら屋になりたかったQ尊敬する人は誰ですか?Aスティーブ・ジョブズ。クリエーティブでどんどん開拓していくところQ人に負けない、負けたくないところは?Aずっとやり続けている臨床と研究Q1カ月休暇が取れたら?A家を片付けて、ちょっと旅行へ。ハワイへ行きたいQ好きな書籍や作家は?A今は読む時間がないが、昔はサスペンスものが好きだったQ今の若い人のいいところは?A物おじしないところ。広大の学生はフレンドリーにものを聞いてくる。中野准教授に一問一答なかの・ゆきこ●広島県出身。広島大学医学部、大学院医学研究科、博士課程内科系専攻。医学博士。1992年、広島大学附属病院で研修医としてスタート。翌年、県立広島病院へ。その後広島市立安佐市民病院を経て1999年、広島大学医学部・歯学部附属病院で臨床をしながらさまざまな研究に携わる。研究キーワードは不整脈。頻発誘発性心筋症の症例に、HCN4遺伝子多型変異性が多いことを世界で初めて発見。研究成果は米国科学誌オンライン版に掲載された。循環器内科不整脈ラボの仲間たちと正常な心臓内で発生する電気の流れ(A)とは別に、心房細動では、心房の中で電流が旋回する(B)ため、心臓の動きが悪くなり、肺に水がたまるなどして心不全になりやすいとことん突き詰めていく情熱 心臓は、胸の中心で鼓動を打つこぶし大ほどの筋肉の塊。右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋からなり、1日に約10万回収縮したり伸びたりを繰り返し、全身に血液を送り出すポンプの役割をしている。正常な人ならば一定のリズムを刻むように規則正しく働くが、本人が気付かないうちに不規則な動きをする場合がある。不整脈と呼ばれる症状で、その中の一つ「心房細動」は、60代くらいから加齢とともに頻度が高くなっていき、ある日突然、心不全や脳卒中を引き起こすことがあるという。 中野由紀子准教授らの研究グループは、4年前から、心房細動で心不全を起こした頻発誘発性心筋症の患者を追いかけていた。その結果、心筋症を起こさない人に比べ「HCN4」という脈をコントロールする変異型の遺伝子が多いことが分かり、心不全を引き起こす原因になっていることを、世界で初めて発見した。 「HCN4遺伝子多型変異型は、心房細動の人の心機能低下や心不全のリスクのマーカーになる可能性があります。心機能低下を起こす人を予測できれば、早期に治療・管理して、心不全を未然に防ぐことができるのです」と中野准教授は話す。 研究のきっかけは、研修医のころから心臓の臨床を経験していく中で、突然死や心房細動のカテーテル治療に向き合ったとき、一部の人だけ、どうしてこうも心臓が悪くなっているんだろうという疑問に突き当たったこと。「そういう人をあらかじめ見つけられないか」とずっと思っていたと言う。「自分が臨床で疑問を持ったことを、突き詰めていくことにやりがいを感じます」患者さんの役に立つ研究を 学生時代、何をしていいか分からず実習現場でうろたえていた時期があったという中野准教授。研修医時代に救急で運ばれた心筋梗塞の患者が治っていく様子に感動を覚えて循環器の道に進んだ。研究、診察を続けながら、これまで約3,300件のアブレーション治療(※)を行ってきた。 モットーは「人に役立つ研究をすること」。臨床に結びつく研究を重ねていき「患者さんのためになれたらうれしい」と目を輝かせる。 例えばブルガダ症候群という、30代から40代のときに突然死を引き起こす病気がある。ぽっくり病とも呼ばれている。最近心電図で早期発見が可能になったが、なぜ患者が突然死を起こすかという理由は明らかになっていない。 そこで中野准教授は大学院生とともに、過去に突然死につながる発作を起こした人、起こさなかった人の違いを検討し、突然死のリスクモデルを構築。こうした試みは全国にも広がり「1年後くらいに一通りの成果が出ると期待しています」と力強く話した。 「最近では心臓病も治療ができ、治っていく時代。私の専門分野の不整脈治療では、カテーテル治療から遺伝子診断まで広島大学はさまざまなことを行っています。今後は、他大学との連携を深めながら、難しい症例に取り組むなど先進的な治療や研究をやっていきたいですね」と語る。アブレーション治療を行う中野准教授(右)※頻脈性不整脈の改善のため、体内に入れたカテーテルの先から高周波電流を流して組織を焼き切る治療正常な心臓(左)と心房細動の心臓(右)014
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