HU-plus(Vol.7)2018年8月号
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学生室調査船ならではの砂や泥を採取する観測機械。2,000m近くワイヤーを伸ばして深海のプランクトンを採ることもできる海の表層に漂っている稚魚や卵をすくい上げたり各種ネットで海底の生物を採集して研究室で分析深海の水圧で一気に圧縮されたカップ麺の容器モニターなどが完備された教室兼学生食堂机上では得られない、フィールド演習ならではの醍醐味だいごみ豊潮丸の基地は呉港の一角にある●生物生産学部 附属練習船「豊潮丸」時にはイルカの群れに出会うことも航海用レーダーの説明をする中口船長第2特集◎ 広島大学生物生産学部附属の練習船「豊潮丸」は、1949年に旧海軍の木造船を譲り受け、瀬戸内海を中心に航行を開始した。4代目の今は256トン、スピードは約10ノット(時速20キロ程度)。国立大学で初めて電気推進システムを採用し、研究の妨げになるエンジン音や振動を極力防いでいる。 定員は32人、乗組員がそのうち12人で、教員と学生、研究者など最大20人が乗り込む。呉港を母港に、日帰り実習もあれば、調査内容によって長い航海で約2週間、船内で寝泊まりしながら共同生活を行う。 「海は予期しない出来事の連続。外洋で大波に遭い、揺れで船酔いしベッドから起きることができない学生もいれば、船の舳先にイルカが遊びに来て、水面をジャンプする様子を目撃することもあります。気温や海水温、海流なども自動観測し、1分間隔でデータを蓄えています」と中口和光船長。 調査海域は多島海や閉鎖性海域と呼ばれる瀬戸内海全域と、黒潮流域の屋久島や沖縄、対馬・山陰あたりまで。海と深く関わりながら生活する人々に、影響のある海域の生物や環境を調査し、大学ならではの視点で温暖化の影響を研究したり、他大学との共同利用で医学分野への応用目的のための海藻や海綿を採取したりしている。 また、2012年から豊潮丸は教育関係共同利用拠点に指定されているため、海洋を学ぶ全国の学生などを広範囲に受け入れ、さらに地元の学校を対象にした体験航海を行っている。へさき008

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