HU-plus(Vol.7)2018年8月号
8/32

絶滅危惧種カブトガニ幼体の脱皮殻を手にする大塚教授 竹原ステーション近くの干潟には、生きた化石『カブトガニ』が生息している。広島県内では貴重な生息地となってしまった。この干潟には成長のための餌場である藻場もあり、すむために必要な環境が整っているように見えるが、ほんのわずかな個体数しか確認されていない。絶滅の危険性が極めて高いのだ。このカブトガニの保護、言い換えれば生産性の高い干潟、藻場の生態系を保全するために、大塚攻教授を中心に調査や啓発活動が行われている。 大塚教授が取り組むその他の研究対象は動物プランクトンと共生生物で、世界が注目する研究が行われている。それは、人間の食に大きく関わっている動物プランクトンのカイアシ類と、今水族館で大人気のクラゲ。「カイアシ類は魚の子ども時代の餌として最も重要で、マグロでも小さい時にはこれを食べて成長します。種数は約12,000種あり、新種も毎年多く報告されています。一方、寄生性種も存在し、例えばサケジラミというサケ類の寄生虫は、世界中の養殖業に毎年500億円ほどの被害を出しています」。竹原ステーションではこうした動物プランクトンや寄生虫の多様性の研究を通して、持続的社会の確立を目指している。 大塚教授はクラゲの調査のため、国内だけでなくフィリピン、タイ、マレーシアへも出掛ける。採取したものは生きたまま持ち帰り、クラゲの一生の解明を行っている。ハブクラゲのように刺されたら人でも死に至る危険がある毒性の強いものにもカイアシ類が寄生したり、毒性の強いアカクラゲ、ヒクラゲにもアジやイボダイの子どもが片利共生していることも突き止めた。魚がクラゲに守られているのだ。こうしたクラゲとさまざまな他生物との共生・寄生関係は意外に知られておらず、研究のテーマは尽きない。生命の源である海。広大は瀬戸内海や南シナ海などをフィールドに研究し、活動しています。生物を通して、海のダイナミズムを知る14人が乗船できるカラヌス丸。広島湾や松山沖まで行く魚や貝、プランクトンを長期間飼育できる屋外水槽竹原ステーション前の潮間帯。多くの新種の海洋生物が発見されたクサフグ、寄生虫、バクテリアの関係性を研究する学生たち●大学院生物圏科学研究科 附属瀬戸内圏フィールド科学教育研究センター 竹原ステーション(水産実験所)第2特集◎生物生産学部附属練習船「豊潮丸」基地広島観音マリーナ東千田キャンパス霞キャンパス大学院生物圏科学研究科附属瀬戸内圏フィールド科学教育研究センター竹原ステーション(水産実験所)呉市竹原市広島市東広島市尾道市東広島キャンパス大学院理学研究科附属臨海実験所007

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る