HU-plus(Vol.7)2018年8月号
25/32

女性中心の職場のため「仕事に支障がなければ、お子さんの学校行事のために休んでもらって構いません」と小原さん。働きやすい職場にするためにできることは何でも取り入れてきた。その取り組みが認められ、広島県の「働き方改革実践企業」に認定されたデンタルタイアップは歯科医院の組織変革事業、研修事業、活字に残す事業の三つを柱にしている。全ては「歯科業界を活性化させたい」という思いから、関わった歯科医院の情報やコンサルティングを行う際に使用する「現状分析シート」なども全て書籍やホームページで公開している大学院時代、若い同級生たちに本当に助けられたそう。「若い人は素晴らしい」と何度も話す小原さんそか  デンタルタイアップは歯科医療界になじみの薄かった「マネジメント」の考え方を導入し、より良い歯科医療を提供するための組織変革支援を行っています。歯科医院に出向いてコンサルティングを行うマネジメントスタッフ7人、経理などの事務スタッフ4人の会社ながら、北は宮城から南は鹿児島まで、全国の歯科医院にサービスを提供しています。 世界でも類を見ないほどのスピードで少子高齢化が進む日本では、社会保障費の負担増など緊迫した状況にあります。平均寿命が延びる中、大切なのは健康寿命を延ばすこと、それを可能にするのが歯科業界だと小原さんは考えます。「最後までちゃんとご飯を食べて、飲み込めて、話せる。それを支えていくのが私たちの役割だと思っています」 専門学校を卒業し、歯科衛生士として広島県歯科医師会に勤務していた小原さんは、40歳を過ぎて管理職になりました。しかし「管理職の役割を理解していなかったために、職場で完全な四面楚歌状態になってしまいました」。当時は歯科衛生士の教育課程が2年制から3年制に移行する時期で、異動で歯科衛生士学校の教員となった小原さんは、教員を続けるために大学で学ぶ必要に迫られていました。「でも、仕事で疲れ果てていて、学ぼうというエネルギーはありませんでした」 そんな時、18歳になった息子さんが自動車学校に行くことになり、免許のなかった小原さんも一緒に通うことに。そこで学ぶ楽しさに目覚め、大学進学を決意。産業能率大学の通信教育課程で経営学を学び始めました。「経営学は『組織をどう動かすか』を学ぶ学問ですが、自分の職場での悩みの原因や対策を学問を通して理解できることが驚きでした」。卒論に取り組む頃に先輩の歯科衛生士さんに「大学に行ったのなら大学院にも行った方がいい」とアドバイスを受け、広島大学大学院への入学を決めました。 大学院では井上善海教授(当時、現広島大学名誉教授)のゼミで中小企業の経営戦略について学びました。「井上教授は『従業員が8人までの規模で組織を確立できれば、30人までは同じやり方で組織を動かせる』とおっしゃっていました。この規模は歯科医院と同じであり、経営学の基本的な理論がそのまま使えます」。ここで学んだことを生かして、歯科医院に「チーム一丸体制」でより良い医療提供をしていただくための支援をしたいと、起業した小原さん。歯科医院に「患者、自分たち、社会」の三方良しの考えによる職場づくりを提案すると同時に、テレワーク(在宅勤務など)や時間単位で全ての有給休暇を取得できるなど、自身の会社でも常に働きやすさを取り入れる努力を続けています。 最後に、広島大学の後輩へメッセージをいただきました。「今の若い人は『ゆとり世代』と言われて自分たちにマイナスイメージを持っている人も多いと思いますが、オリンピックでも過去最高のメダルを獲得したり、国際学力調査でも優秀だということが証明されていたりする素晴らしい世代です。だからもっと自信を持って、新たな社会を築き上げてほしいと思います」024

元のページ  ../index.html#25

このブックを見る