HU-plus(Vol.7)2018年8月号
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 藤代裕之さんの専門はジャーナリズム論。ソーシャルメディア(ブログやSNSなど)時代の「伝え方」の研究と実践を行っています。著書『ソーシャルメディア論:つながりを再設計する』は「今までありそうでなかった、ソーシャルメディアについて学問的に論じた教科書」と藤代さん。他にも多数の著書を出版し、中には『ネットメディア覇権戦争偽ニュースはなぜ生まれたか』など旬のネットメディアを分かりやすく解説したものもあります。「現代はネットやソーシャルメディアありきの世界。〝恐いから〟と避けるのではなく、一人一人がより良く使いこなして、より良い社会をつくろうと思えばいいのです」 広島大学を卒業後、地元の徳島新聞社へ入社。社会部で事件や事故の取材をしていた藤代さんは、文化部へ異動した後、中高生向け紙面のリニューアルを担当していました。そのさなか、新聞で表現できることの限界や若者の新聞離れを目の当たりにし、ウェブニュースの編集者に転職することを決意しました。「当時、ちょうどブログが盛り上がりはじめた頃。ネットの次の波(ソーシャルメディア)が押し寄せてきそうだなと。だったら、波にのまれる前に、自分から波に飛び込んで、楽しんでしまえと思ったのです」 藤代さんの予感は的中し、誰もがスマートフォンを片手にする時代になりました。急速に普及したソーシャルメディアで簡単に発信できる一方、その気軽さゆえに誰かを傷つけたり、誤った情報を掲載したりする事例が多発しています。一番の問題点は、社会全体で“発信の仕方”が教育されていないこと、ひいては、そもそも専門の教育者がいないことだと藤代さんは指摘します。「自動車の教習所に行って、これくらいの強さでアクセルを踏めばこれだけスピードが出るのか、というさじ加減を体感したり、クラッシュした車の映像を観て便利さだけじゃなく危険性も学んだりしますよね。ネットやソーシャルメディアも同じことで、弱点があるからこそ、それを事前に学ぶシステムの構築が必要なのです」 法政大学社会学部では広報委員も務めている藤代さん。パンフレットのリニューアルに携わるなど、他大学の強みや弱みを研究しながら、大学広報も担っています。そんな藤代さんに広島大学はどう映っているのでしょうか。「多くの地方国立大学は、県内出身者やその近辺のエリアから来る学生が大半です。でも、広島大学は西日本のさまざまな地域から学生が集まってくる。それだけ多様な学生がいて面白い。地方国立大学として際立った存在で非常に優れていると思います」 最後に広大生へメッセージを伺いました。「『広大生は素朴で真面目』と言われることをネガティブに受け取る人もいますが、素朴さ、真面目さは働く上でとても大切なことです。もっと前向きに捉えてほしい」。将来や進路に悩む学生に対しては、「大学生になって自由な時間が増える半面、人生経験が少ないから“自分が何者か分からない、進むべき道が分からない”と悩むのはある意味当然のことです。分からないからこそ、自分が興味を持ったことにチャレンジする。まずは、とりあえずやってみることですよ」とアドバイスをいただきました。022今回、藤代さんにインタビューをした「ええね広大!学生広報ディレクター」と共に。「勉強すればするほど、分からないことが分かってくる」と話す藤代さん藤代さんの著書には『発信力の鍛え方』『地域ではたらく「風の人」という新しい選択』『ネットメディア覇権戦争偽ニュースはなぜ生まれたか』など多数。ビジネスで、ソーシャルメディアを使う方法をはじめ、ソーシャルメディアの見方・考え方を分かりやすく紹介022

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