HU-plus(Vol.7)2018年8月号
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 人と違っていい。自分は自分でいい。日本で周囲との同化に必死だった私は、友人の言葉によって一気に解放された。 多様な国籍や文化を持つ人々が共生するニュージーランドは、雄大な自然に囲まれ、どこまでも澄んだ空気とともにゆっくりと時間が流れている。その風土に象徴される寛容な国民性を最も感じたのは、留学先で所属していた吹奏楽団だった。周囲との音の調和に厳しい日本の吹奏楽しか知らなかった私には、メンバーが個人の思うまま自由に演奏していたことは、大きなカルチャーショックだった。全員が互いの音楽に対する感受性を尊重している。それは、ありのままの自分を大切にすると同時に、他者を受容するというニュージーランド社会の縮図であったように思う。音楽という世界共通のコミュニケーションツールを通して、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちと一緒に創り上げる瞬間芸術。コンクールの舞台でそれが最高の評価を受け、仲間と同じ喜びを共有できたのは一生の財産だ。 人と違うからこそ良いと気付けば、相違を受け入れる器を広げられる。国際人を目指す者として、多様性に溢れた、和して同ぜずの精神で社会への発展に貢献したい。Be dierent. Be your own.総合科学部 総合科学科人間探究領域4年田松 夏実釈迦誕生祭(旧暦4月8日)を祝う、色とりどりの提灯 「韓国のどこ出身なん?」日本人の友人との会話で、聞かれるたびに困ってしまう質問だ。「慶州なんだけど・・・」恐る恐る答える。 慶州は釜山に近い都市で、昔の韓国の三王国の一つ、新羅の首都だった。そのため、仏国寺をはじめ遺跡や建造物が多く、歴史の香りを秘めている趣のある都市である。しかし、日本での知名度は低く、田舎っぽさも感じられ、何となく慶州出身と答えるのは、はばかられた。ソウルや釜山のように都会だったらと、いつも思っていた。 日本に来て友人ができ、地元に対する思いの違いに驚かされている。出身地の話になると、地域の名物や、伝統、方言について、皆お互い熱を入れて話している。自分の故郷への誇りや、魅力がよく伝わってきた。日本に来て3年目。そんな友人に影響され、少しずつ慶州が好きになっていった。 地元を出て、初めて気付いたふるさとの魅力。日本に来たからこそ、気付けたのかもしれない。慶州、歴史の香りを秘めている誇らしいふるさと工学部第一類(機械システムプログラム)3年キム・キョンジョ(韓国)留学紀行●留学先:ニュージーランド・オークランド大学 ●留学期間:2017年2月~2017年12月●HUSAプログラム※を利用※広島大学短期留学交換プログラム(Hiroshima University Study Abroad Program)は、学部生・大学院生が大学間学生交流協定などに基づいて母国の大学に在籍しつつ、 留学先大学で現地の学生と同じ授業を受講し、単位修得を目指す制度。金賞を受賞した吹奏楽コンクールのステージ018

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