HU-plus(Vol.7)2018年8月号
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❶保護施設として改修中のプール❷出前授業で子どもたちが発案。製品化された根付❸副読本『オオサンショウウオがいるらしい』(東広島市教育委員会・税込み100円)Q趣味は何ですか?A魚をさばくこと。釣り・船遊び、スキューバダイビング、魚突き(離島で暮らしていた時の経験から)Q子どもの頃の夢は?A刑事や自衛官になり世の中を守るQ尊敬する人の名前と理由は?A上杉鷹山、山田方谷。江戸時代、貧しい藩の財政を立て直し、高い志と先見性で教育に力を入れたところQこれだけは絶対誰にも負けないと思うことは?A粘り強く、ぶれることなく!Q休日はどのように過ごしますか?A長男と釣りやキャッチボールQ1ヵ月休暇が取れたら?A長男に相談したら「小人(こびと)を探しに行こう」と言われた(笑)Q最近の若者のいいところは?A一見寡黙だが、個別に関わると実は内面に熱いものを持ち、高い能力がある。また、他人を思いやれる優しい人間が多いと思うQ日本の社会や文化についてご意見をA私たちを取り巻く「里海・里山」の景観や生態系は危機にひんしている。今、声を上げなければ20年後には大きくその形を変えているかもしれない。我々が先祖から育んできた文化をみんなで守りましょう!Q好きな言葉、座右の銘は?A「散ることを知りながら咲くことを恐れない」「雲外蒼天(どんな厚い雲の上にも青い空は広がっている)」しみず・のりお●1976年広島県生まれ。2006年広島大学大学院生物園科学研究科博士課程後期修了。農学博士。同年より広島大学総合博物館勤務。学芸職員、助教を経て2017年准教授。日本動物行動学会、日本オオサンショウウオの会、日本魚類学会、博物科学会などに所属。2016年、出前授業先の小学校が環境省主催「こどもホタレンジャー2015」環境大臣賞(最優秀賞)受賞。2018年、観察会を受講した地元の小学生が第58回動物愛護の作文コンテスト環境大臣賞(最優秀賞)受賞。オオサンショウウオは岐阜県以西の西日本を中心とした山間部にしか生息していない日本の固有種。東広島で今見られるのは、とても幸運なことだ。広大の総合博物館で実物の剥製や骨格標本を見ることができるほか、本年度末には豊栄町にオオサンショウウオの一時保護施設「オオサンショウウオの宿」がオープン予定子どもたちの中には初めて里山の生物に触れる子も多いが、みんな興味津々。目を輝かせながら、大人たちの話に聞き入る。それがいずれ、自然の生態系を守る活動にもつながっていくはず、と清水准教授は話す川の中で今、何が起こっているのか 2018年5月、東広島市豊栄町の椋梨川に、広島市や東広島市から小学生25人がマイクロバスで到着した。広大の清水准教授が企画した出前授業「野外サイエンス教室」への参加者たちで、目的は国の特別天然記念物である『オオサンショウウオ』や水生生物を観察すること。講義の後1人1つずつ網を持ち、先生や学生アシスタントの指示に従って果敢に川ヘ入って行った。 清水准教授が最初に里山の調査に入った頃、豊栄町に住む古老から話し掛けられたことがある。「昔は川にうようよオオサンショウウオがおって、わしらは一緒に遊んどった。今ではほとんど見んよのう」。その言葉に、世界最大級の両生類であるオオサンショウウオには敵はいないはずなのに、何が起こっているのだろう? という疑問が湧いてきたという。 オオサンショウウオは、『生きた化石』『生きた国宝』とも呼ばれ、文化財保護法で厚く保護されているが、その数は全国的に減少傾向で、その生態もまだまだ未解明な部分が多いそうだ。生態学者としての責務を、果たしていきたい 清水准教授は、2011年から東広島のオオサンショウウオの調査を始め、これまで60頭の成体を確認。マイクロチップを挿入して追跡調査を行い、自然巣穴で繁殖する様子を6年間見続けてきた。しかし、ある個体群では幼生が生まれているのに、その後の全長約50~400㎜までの個体がほとんど見つからない。親が生き残れても幼生が生き残れない環境になっている可能性が高いのだ。また、人間が作った人工の堰によって上流の巣穴ヘ到達できず、繁殖もしないで老齢化しているという問題も見えてきた。幼生はどこに消えているのか?清水准教授は、両生類では日本初導入の超小型タグを幼生に挿入し地道な追跡調査を続けている。さらに、本当に高齢化しているのか?広島市安佐動物公園との共同研究により、世界初となるオオサンショウウオの年齢査定にも挑戦中だ。 これまで行ってきた出前授業や出前展示で「我々、生態学者は『生き物の今』を知った以上、その現状をより多くの人に分かりやすく伝える責務があります」と力強く語る。 清水准教授には夢がある。「オオサンショウウオが昔のように地域の人々と共存できる『保護区』を設定して、展示物(地域資源)として活用する『賀茂台地エコミュージアム』を実現すること。そして、過疎化に苦しむ里山において、大学と地域、自治体が連携したエコミュージアムを活用した地域の活性化と自然再生の両立を実践する新たなモデルを作りたい」 学生には、こう話したいと言う。「我々人間も宇宙船『地球号』の一員で、生態系を構成する一つの生き物です。他の生き物を知り、理解することは我々自身のためでもあります。スマホなどの画面だけで見るのではなく、野外ヘ出て自分の目で見て、手で触れる実践力を身に付けてほしい。また、フィールド研究では良いコミュニケーションなくして、良い研究は生まれない。どんどんフィールドに出て地域の皆さんとの交流の中で学んでほしい」むくなしせき※オオサンショウウオは特別天然記念物のため、許可なく捕獲することは厳禁です。014●❸●❶●❷

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