HU-plus(Vol.7)2018年8月号
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脊索動物の中でもっとも祖先的なナメクジウオホヤの仲間のカタヤユウレイボヤ。孔が2つあり片方から海水を取り込み、もう片方から排出する広々とした実習室。理学部だけでなく、総合科学部や教育学部の学生も実習を行う海底に潜む生き物にヒトの起源を探る研究材料ヒメギボシムシ。体長10㎝程度。ギボシムシは、海底の砂や泥の中に生息し、長いものでは2m以上にもなる海洋生物の観察や遺伝子研究によって、ヒトの成り立ちに迫る田川准教授●大学院理学研究科 附属臨海実験所瀬戸内に見られる多種多様な生物を子どもたちと一緒に採集第2特集◎ろ 東広島市から東ヘ約60㎞、尾道市向島の南東端に『大学院理学研究科附属臨海実験所』がある。1929年、地元の住民からの要請で建設が始まり、4年後に最初の平屋の本館や寄宿舎が完成している。 その後、近代的な建物に変貌した現在の臨海実験所の目的は、生物多様性や発生と進化の研究と学生の海洋生物教育実習。5年前、全国の国立大学8大学と合同臨海実習をするようになってからは、毎年この場所で、各大学の専門分野の先生方による講義や実習も行われている。 田川訓史准教授の研究テーマは『進化・発生学』。向島の自然環境を活用し、半索動物ギボシムシや無腸動物ムチョウウズムシなど、珍しい海洋動物を材料に発生と進化に関する研究に取り組んでいる。「ギボシムシは、ナメクジウオや私たちヒ卜を含む脊索動物に近縁な動物で、半索動物と呼ばれるグループに含まれます。脊索がないギボシムシと脊索があるナメクジウオやヒトのゲノム(ある生物の全遺伝子情報)をさまざまなレベルで比較することで、ヒトの起源や進化を探ろうとしています。ヒトを含む新口動物の祖先がおそらく現生のギボシムシのようなもので、漉過摂食をする動物であったことも先ごろ明らかになったのです」 田川准教授のこの研究は3年前、イギリスの国際的な総合科学ジャーナル『Nature』で発表され、話題を呼んだ。こうした研究の積み重ねと、今までに触ったことのないような生物の多様性を調査するため、海外からの留学生も含め学生たちが積極的に参加している。向島は地の利が良く、尾道からしまなみ海道をレンタサイクルで渡って来るルートは、お薦めのコースだ。せきさく009

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