HU-plus(Vol.5)2018年1月号
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ばいい。そういう魅力がエジプトにはあると思います。越智:なるほど。先生はその魅力を広く知ってもらうために講演会やイベント、テレビなどのメディア出演もされてきたのですね。越智:話は変わりますが、広島大学は広島に原爆が落とされた歴史があることから「平和を希求する大学」ということで、先ほどのE-JUSTでも平和学をやろうとしています。エジプトを含めたアラブ地域にも地域紛争がありますから、平和を希求する精神を学んでいただきたいと考えています。吉村:ぜひとも東日本国際大学も一緒に平和学をやらせていただきたいです。今、うちの大学では「文科系にも分かる放射線学」を長崎大学と一緒にやっています。長崎大学から先生に来ていただいて、合宿で教えていただいています。東日本国際大学は福島第一原子力発電所に一番近い大学ですから、放射線について非常に神経質になっているのです。でも、専門家が言う内容はとても難しくて理解できません。日本全国の学生の8割は文科系ですから、文科系の学生にも分かるように放射線のことを教えていただいて、心のケアをしたいのです。越智:3.11(東日本大震災)のとき、私は大学病院の病院長だったので、次の日からすぐに医療スタッフを派遣しました。福島には延べ人数で1,300人以上を送りました。私も同年3月30日に行かせていただきました。吉村:そうですか、ありがとうございます。ではぜひ心のケアや放射線について、広島大学から講師の方に来ていただきたいです。私はいつも言っているのですが、福島の放射線についていろいろ言われていますが、広島と長崎にはすでに研究されていることがたくさんある。今まで研究されてきたことを教えていただくことによって、福島の人たちを精神的に安定させてあげたい。福島の人たちは毎日心配しているわけです。うちの大学には放射線量を測るモニターが四つもあるのですよ。それを毎日見ているのは、心理的によくないと思います。越智:必要以上に恐れる心配はないのですから、正しい知識が必要ですね。吉村:そうそう、知識が安心させると思います。知識がないから不安になるわけでね。越智:では、先生、最後に学生にメッセージをいただけますでしょうか。どんな風に学生生活を送ったらいいか、アドバイスしていただけるとうれしいです。吉村:人の一生は長いようで短いから、勉強しないといけないと思います。でも最近、勉強しない学生が多いようにも思います。うちの大学でも「先生、私は勉強が嫌いです」と言う学生がいます。面白い授業がないとか、学生からするといろいろ理由があるのだろうけど、勉強するという姿勢は絶対に必要です。僕も学生時代には授業に出ないこともありましたよ。だけど僕はエジプトの勉強はしていました。だから好きなものを早く見つけて、その勉強をして、その道の世界一を目指してほしいですね。僕は今も世界一のエジプト考古学者になろうと思っています。今は三番目ですけどね。越智:上に2人いらっしゃるのですか。吉村:イギリスの人ですが、僕より年齢が上ですから。だからもう少ししたら僕が一番になります(笑)。越智:本日はどうもありがとうございました。※E-JUST(エジプト日本科学技術大学設立プロジェクト):エジプト・アラブ共和国で、日本型の工学教育の特長を生かした「少人数、大学院・研究中心、実践的かつ国際水準の教育提供」をコンセプトにする国立大学に日本が技術指導と研究・教育機材整備を行うプロジェクト。エジプトや中東・アフリカ諸国の経済・社会発展をリードする優秀な人材の持続的な輩出を目指している。 51年間にも及ぶ吉村先生のエジプトでの発掘調査の軌跡が、写真と先生の楽しいお話によって紹介されました。ホームカミングデースペシャル企画として、講演会が行われました「エジプト発掘の魅力」吉村作治氏2017年11月4日 広島大学で対談006
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