HU-plus(Vol.5)2018年1月号
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 “Mosi-oa-Tunya”(雷鳴とどろく水煙)。現地の言葉でこう表現されるビクトリアの滝はザンビアとジンバブエの国境に位置し、ナイアガラの滝、イグアスの滝と並んで世界三大瀑布(ばくふ)に数えられる。雨季の4月と乾季の11月とでは水量に10倍もの違いがあり、訪れる季節によりさまざまな表情に出会うことができる。雨季に訪れると、滝から舞い上がる水煙が豪雨のように降り注ぎ、雨具が意味をなさないほどずぶぬれになる。一方、乾季は水量が少なく、崖の岩肌まではっきりと観察できる。近くの国立公園にはライオン、キリン、ゾウ、シマウマなど豊かで厳しい生態系の姿がある。 このような自然に恵まれた国、ザンビアで私は2年間、ミッション系の中等学校で理科教員を勤めた。日々の理科の授業を行う際に大切にしていることがあった。それは生徒の身の回りの事物・現象から疑問を見出させることを出発点に授業を展開することだ。身近なことから発生した疑問を自分たちで一歩一歩解決していくことで、生活と理論の関連付けを図る。そのため、ザンビアの生活の文脈に適した題材を探しまわる毎日だった。例えば、栄養の単元ではザンビアの食生活やザンビア特有の病気を一つ一つ調べた。生徒たちは「生活のことでわからないことがあったら、私たちが教えてあげるよ」と授業に協力的で、私は何度も助けられた。日本から教えに来た身でありながら、彼らから学ぶことが非常に多い2年間であった。文化が違えばその文化を尊重して活動しなければならない。グローバル化が叫ばれる現代、彼らとの交流を通して、彼らから学ぶべきことがたくさんあるということに気付かされた。ザンビアの生活を題材に授業を行う中で、生徒たちから多くを学ぶ。国際協力研究科博士課程前期教育文化専攻2年髙橋 裕 Yu Takahashi雨季のビクトリアの滝。満月の夜には滝の水煙をスクリーンに、月明かりの虹(ルナレインボー)が現れる学校にある数台の顕微鏡でタマネギの表皮細胞を観察。うまく焦点が合うと歓声も留学紀行編集・発行 : 広島大学 財務・総務室 広報部 広報グループ〒739-8511 東広島市鏡山1-3-2 TEL:082-424-6762 FAX:082-424-6040E-mail:koho@oce.hiroshima-u.ac.jphttps://www.hiroshima-u.ac.jp100年後にも世界で光り輝く大学へ●ザンビア滞在期間:2015年6月~2017年6月 ●ザンビア特別教育プログラム※を利用 ※ザンビア特別教育プログラムとは、アフリカのザンビアでJICA青年海外協力隊として、理科や数学を教えながら、広島大学大学院国際協力研究科(IDEC)で修士号を取得するプログラムです。(写真は本人提供)

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