HU-plus(Vol.5)2018年1月号
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 リコーはバブル崩壊を背景に開発競争が激化する中、複合機のデジタル化やカラー化の推進、MIF(複合機の設置台数)の取り込みによるアフターサービスの拡大など、収益の確保と経費削減に取り組んできました。 企業として生き残りの道を模索する中で、2017年4月、社長に山下良則さんが就任。『再起動』をスローガンに掲げ、どのようにリコーを変革するのか、興味津々でお話をうかがいました。 最初に山下社長が下した決断は過去を否定していくことでした。「今まで通りやれば会社は成長し利益を上げられるという社内の暗黙の了解を断ち切る。体質にメスを入れることを宣言しました」。それによって、若手や中堅の社員がこれまでとは違った環境で新しいプロジェクトをどんどん進めていくことができる。そうした社風の変化にも期待されているようです。 「私はコミュニケーションを大切にしています」と山下社長。これまで37年間、台湾・イギリス・中国・アメリカと海外勤務を経験。「もともと現場育ちですから」と言われるように現場を大切にし、工場の立ち上げや販売拠点を作る時にも、その時その場所のスタッフたちと、直に話し合ったそうです。最初の赴任地・台湾では、「円高が一気に進んで家電・精密業界がこぞって部品を海外から調達するという風向きになっていた頃で、大胆にも台湾スタッフと二人だけで現地を歩いて交渉しましたね」。 この経験を機に、会社やお客さま、人に対する認識が変わってきたと言います。「人のやる気とコミュニケーションの力で、いろいろなイノベーションを起こしていけると気付きました。現在、国内外に10万人を超える社員がいますが、『企業の宝は、社員のモチベーション』だと常々思っています。社員のモチベーションを上げていくために、些細なことでも直接話し、いいところを引き出していきたい。現場で対話し、現場を味わうと意思決定も速まりますから」。動くのは性分、今でも社長室にいることはほとんどないそうです。 広大は「スーパーグローバル大学創成支援事業」タイプA(トップ型)に採択されています。海外赴任のご経験上、グローバルとは、という視点でご意見をうかがってみました。「世界と渡り合う時に大切なことは、現地の価値観を学ぶことです。考えが合わない時もある。それを論破するのではなく、なぜそういうふうに考えるのかを理解し、さらにこういう考え方もあると相手に伝えます」。日本のやり方は伝えてもいいが、日本ではこうだった、とは言わない方がよいとのことです。「学ぶより慣れていく。広大でも海外の学生がキャンパスにいるという環境が、グローバルな人を育てていくんでしょう」と山下社長。 最後に、広大の後輩へメッセージをいただきました。「よく勉強してください。社会に出ると、学生の時の勉強とは違うが、日々学ぶという姿勢がないとなかなか自己実現ができません。自己実現というのは、僕の場合はお客さまや仲間が喜ぶ笑顔という価値だと思っています。若い頃に吸収できることはいっぱいある。それを早く見つけることですね」上/意見を聞き、対話をすることを大切にする山下社長。入社式では社員の中に自ら入り、話をしながら一人一人に握手を求めた下/東京都大田区中馬込の本社事業所022上/現場の状況を見て、スタッフと対話するいう姿勢は入社以来ずっと変わらない。「RicohElectronics, Inc.」というアメリカの生産子会社の社長をしていた頃も、よく現場に顔を出していた下/山下社長は、これまで多くの時間を家族とともに海外の赴任地で過ごしてきた。そのたびに子どもたちは、その土地の文化や習慣に自然に慣れ、とけ込んでいったという022

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