HU-plus(Vol.5)2018年1月号
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Q趣味は?Aないです。妻にもよく「老後のためにも早く趣味を持ってくれ」と言われています。本を読むのは好きです。一番多いのはノンフィクションですが、小説も読みます。浅田次郎、城山三郎、高杉良、吉村昭。最近では東野圭吾もよく読みます。面白くてあっという間に読んでしまいます。一人作家が決まると、その作家の作品を一通り読んで、また次の作家を読む。でも、読書が趣味だとは思わないですね。Q休日の過ごし方は?A週末はだいたいどこかに出張に出掛けています。休みが取れたら、家族と遊びに行きます。Q今の学生と先生の学生時代と、気質で異なる点は?A海外に興味のない学生が多い。言葉にストレスを感じたくないというのが理由だそうです。私は行きたくてしょうがなかったし、行ってよかった。ぜひ海外には出てほしい、保護者の方にもぜひ応援してほしいです。Q得意なスポーツは?A学生時代は合気道をやっていました。だまされて入部したのですが(笑)、本当にきつかった。卒業後もOB会に参加したり、後輩との交流があったりで、やってよかったと思っています。Q子どもの頃の夢は?A「ブラック・ジャック」を読んで外科医になりたいと思っていました。親友のお父さんも外科医で、格好よかった。外科医を目指したのは、そのお父さんの影響もあったと思います。Q尊敬する人物とその理由は?Aたくさんいらっしゃいますが、横山隆先生は私が第一外科に入るきっかけとなった方。とにかく厳しかったし、誰よりも勉強も仕事もされていた。先生に会えてよかったと今でも感謝しています。Q&A大毛教授に一問一答感染症は「治療」から「予防」へ 日本全国で行われる手術の約7%の方に術後感染が起きているという。広島大学病院では、年間約8,000件の手術が行われている。 「例えば整形外科のような清潔度の高い手術では滅多に術後感染は起きませんが、菌数の多い大腸の手術では10%程度の確率で術後感染が起きます。これらを最終的にゼロにしたいのです」 術後の体にはただでさえ大きな負担がかかるが、感染症で負担は増し、入院期間も長くなる。そのために力を入れているのが『予防』だ。 「耐性菌という言葉があります。耐性菌とは薬が効かない菌のことで、術後はこの菌が増えて本当に困っている。だったら感染が起きないようにすればいい。予防が大切なのです」 そのための対策の一つが歯科との連携。広島大学病院に入院したら、どの診療科であってもまず歯科を紹介し、口の中をチェックしてもらう。大毛教授は歯科の先生と診療科を回り、その仕組みを作り上げた。 「口の中の菌数ってすごいんです。歯垢1gあたりの菌数は便の菌数とほぼ同じ。日本人は歯が痛くなってから歯医者に行きますが、先進国では定期的に歯のクリーニングのために歯医者に行くのが当たり前です。広島大学病院に入院して退院したら定期的に歯医者に行く習慣を持ってほしい。そうすることで病気を防ぎ、広島の医療費の削減につなげていきたいのです」外科医が「においを消す布」を着想!? 「感染症には興味がなかった」大毛教授は大学卒業後、長年感染症の研究を行っていた第一外科に入局したことで感染症の研究に取り組まざるを得なくなる。 「がんの遺伝子の研究をしていましたが、成果が上がらなかった」。そこで以前から行きたかった海外に活路を求め、助成金を使ってミネソタ大学に留学。助成金の条件は「感染症の研究をすること」だったため、本格的に感染症の研究に取り組んだ。そこでの毎日はとても刺激的なものだった。 「毎日、『What’s new? 今日は何が見つかった?』と聞かれるんです。それをもとに明日の予定を立てるのですが、自分が今どこにいて、ゴールは何なのかがよく分かった。また、自分の研究室の中でできないことがあれば、いろんな人に声を掛けて、施設や機械も使わせてもらって研究を進めていく。その考え方をそのまま持って帰ってきたのも留学の成果です」 アメリカでは腸管の中の菌が出すガスが病気の原因になっていることを初めて突き止めて、受賞もした。そのガスは臭く、研究者の服や髪にもにおいがつくのを何とかできないかと考えて、繊維メーカーと一緒に消臭布の開発にも挑戦した。 「残念ながら私が考えた方法ではできなかったのですが、メーカーの努力で商品が完成しました」。下着や靴下として製品化され、においに悩む方や介護現場での利用が始まっている。 取材時にも術後感染予防のための製品を企業と一緒に開発中だと楽しそうに語る大毛教授。 「広島大学にはあらゆる種類の専門家がいます。何かしたいと思ったら、必ずぴったりの専門家を見つけて協力することができる。研究者にとっては最高の環境です。そして、ここでの研究の成果は治療や予防など、そのまま患者さんのよい結果につながる。感染症ゼロを目指して努力を続けます」おおげ・ひろき●鹿児島県出身。1991年広島大学医学部医学科卒業、広島大学第一外科入局。2002年からのアメリカ・ミネソタ大学大腸外科への留学を経て、2004年広島大学大学院医歯薬学総合研究科外科学助教、2010年から広島大学病院感染症科教授を務める。炎症性腸疾患や大腸がんなど、下部消化管疾患の外科的治療に携わる。また、感染症診療にも力を注いでいる。「紺色が菌で、ピンク色が白血球。色付けして分かりやすくしています」と研究の図について語る大毛教授。広島大学病院・広島大学内はもちろん、企業とも連携しながら感染症予防やそれに派生する内容の研究・開発を進めるというスタイルは留学先での経験が原点となっていることから、学生たちにも海外に出ることを勧めている手術前後の患者の診療にも力を入れる014
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