HU-plus(Vol.4)2017年8月号
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平和科目は、他の大学ではあまり見られない授業だが、広島大学では必修科目になっている。学部の1年生が必ず取らなければいけない「教養科目」として、2011年度に新設。年々科目数が増え、2017年度は29科目を開講。内容は「原爆」「戦争」にとどまらず、貧困、飢餓、人口増加や経済格差、宗教と歴史、環境問題など、さまざまな観点から平和について考え、理解を深めていく。全科目共通の課題として、平和記念資料館などの平和に関するモニュメントを見学し、レポートを提出することも必須。川野教授は、平和科目ワーキング座長、平和教育部門長として「平和科目」を統括し、その立ち上げ、必須化の教育改革に尽力。自身も「ヒロシマ発平和学」の授業で教壇に立つ。「平和と一口に言っても、その概念は、文明・文化・民族によって大きく異なります。特定の平和概念・価値感を学生に押し付けず、幅広く多様な観点から平和を考え、自分の意見を積極的に発言できるようになってほしいですね」「国際政治と地球環境から見る平和」「放射線と自然科学」「暴力の比較宗教学」など、さまざま科目を開講。「ひろしま平和共生リーダー概論」では白熱したディスカッションが行われる場面も。受け身ではなく自発性を促す講義の一つだ2016年11月に実施した原爆死没者慰霊のためのコンサートの模様。学生らが原爆ドーム対岸の元安川テラスと平和公園供養塔前でバイオリン・フルート・琴・三味線・尺八を演奏し、原爆の犠牲となり亡くなられた方々の御霊に捧げた 原爆ドーム近くの川底では、被爆から70年以上経過した今も、爆風で破壊されて飛び散った広島県産業奨励館(現在の原爆ドーム)の石材やれんが、原爆の熱線によって表面が溶解した民家の屋根瓦「原爆瓦」が見つかる。嘉陽研究員は、それらを拾い集め、広島大学医学資料館などで展示しているほか、海外の大学や教育機関に送っている。実際にドームのどの部分に使用されていたのか、記録写真やドーム内調査によって収集品の9割を特定した。嘉陽研究員は15年前に一人でこの活動を始め、その後、広島大学の学生らを集め「広島大学原爆瓦発送之会」を発足。川での収集作業に加え、原爆死没者埋葬地での遺品発掘や被爆者の聴き取り作業、平和記念公園の原爆供養塔前での追悼コンサートなど、平和を願う活動は幅を広げている。「私たちの活動は原爆で亡くなられた方々の魂の御供養だと思っております。亡くなられた方々の無念さや言いたかったことを代弁するのが役割です」「平和科目」を必修とする大学。旧産業奨励館の破片が伝える被爆者の無念さ。平和科学研究センター長川野 徳幸教授次世代の精神を育成する”嘉陽 礼文 研究員世界に思いを“届ける”008
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