HU-plus(Vol.4)2017年8月号
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  「一番の目標は、災害が起きた時に頼ってもらえる気象予報士になることです」。そう力強く言われたのは、気象予報士・防災士の塚原美緒さん。合格率4.2%の難関を突破して気象予報士となり、2017年の4月から、地元広島テレビ放送の「テレビ派」という番組でお天気コーナーを担当されています。塚原さんはこちらの質問に、キャスターらしく一つ一つ言葉を選びながら丁寧に話をしてくださいました。 子どもの頃から植物が大好きで、足元の草や花ばかりを見て歩いていたという塚原さん。気象予報士になりたいという夢を抱いたのは、小学生の時にテレビで見たお天気コーナーがきっかけだったそうです。「気象キャスターの方が、季節の花を紹介していたんです。それを見て、私もこの花知ってるな、私もこの仕事やりたいと思った時から、気象予報士という仕事を意識しました」 高校進学の時、数学や物理があまり得意ではなかったこともあり、一度は夢を諦めたそうですが、大学卒業後、新聞社勤務をする中で、再びこの夢を思い起こしたある出来事がありました。 2014年8月、地元広島で起きた集中豪雨による土砂災害。この時、70人余りが亡くなりました。全社一丸となって被災地のため駆け回る日が続く中「何もできない自分が悔しかった。もし、近くに防災の専門家がいれば、少しでも被害を減らすことができたのではないか、そんな思いが湧き上がってきました」 その後の塚原さんの行動には、驚くばかりです。仕事の傍ら時間をつくっては、ひたすら気象予報士になるため学んだそうです。資格取得には誰でも年齢に関係なくチャレンジできる反面、合格率は低く難しい試験です。何度か挑戦を繰り返し、2016年10月、念願かなってついに合格。2017年3月には、気象予報士として活動するため職場を移りました。 そんな塚原さんに、気象キャスターという仕事について伺いました。「雨がたくさん降る時や、災害が起こる可能性があるときは特に、詳細な気象情報を伝えることが最優先です」。その上で、天気の崩れがない日には季節の変化をより楽しめるような情報も取り入れていきたいと、塚原さんは話します。今も変わらず植物が好きで、出掛ける時はカメラを手放さず、四季を通して撮りためている写真もたくさんあります。いつかはそれらを紹介したいそうです。 最後に、気象予報士を目指す母校の後輩へのメッセージを伺いました。「テキストや過去問を広げて机の上だけで勉強するのではなく、空を見上げること、日々の天気を追うこと、そして外へ出て自分の肌感覚を鍛えることが大事だと、仕事を始めて改めて感じました。机上では得られないような自然や空の面白さを、学びながらぜひ体感してほしいですね」多くの人が行き交う街頭でスタジオと中継しながら生放送で天気を伝えることも。湿気の多い日にはホタルがよく飛ぶことを紹介するなど、季節ならでの情報を心掛ける本番が近づくと、真剣な表情で原稿をチェック本番前のスタジオで。やや緊張した面持ちでリハーサルに臨む024

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