HU-plus(Vol.4)2017年8月号
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 プロバスケットボール選手と薬剤師を目指す薬学部の学生。2017年の春まで、まさに二足のわらじを履いてきた岡崎修司さんはその理由を「どうしてもどちらか一つに決められなかった。たくさんの人に反対されましたが、『できるかな』と思うことはたぶんできると思って挑戦しました」。Bリーグ発足の年を広島ドラゴンフライズの選手として過ごしながら、この春見事に薬剤師国家試験に合格しました。 小学5年生からバスケットボールを始め、その頃からプロへの憧れはありましたが、当時はまだバスケットボールで食べていくことが一般的ではなかった時代。その頃、祖母が入院し、病院で働く方々を目の当たりにすることで、医療という分野に興味を持つようになりました。その中でも一番身近な薬について調べるうちに、薬学を目指すようになったのです。 「薬学部とバスケットボール部があること」から広島大学を選び、薬学部のある霞キャンパスと、バスケットボール部がある東広島キャンパスを往復する学生生活を送っていましたが、大学3年のとき、広島にプロバスケットボールチーム、広島ドラゴンフライズの発足が発表されました。4年生で部を引退するタイミングで入団テストを受け、合格。「自信があったわけではありません。でもチャンスってそうあるものではない。今やりたいことをやろうと思ったんです」 プロになってからは見てくれる人、応援してくれる人、スポンサーなどいろいろな方に会う機会があり、責任の重さを痛感。「子どもの頃に想像していたプロは、もっとキラキラしていて楽しそうだなあ、という感じでしたが、実際になってみるとバスケットをするだけではなく、きちんとあいさつをするなど、そういったことも大事なんだと改めて感じました。」 Bリーグ発足の初年度は、岡崎さんにとっては薬剤師試験に挑戦する年でもありました。心掛けたのは「限られた時間の中でいかに集中するか」。そのために、ユニフォームに着替えたらバスケットボールに集中、コーヒーを飲んだらバスケットボールのことは考えずに勉強に集中と切り替えていました。「自分にとってはバスケットボールが一番大切。時間も、コンディションもバスケットボールのために調整していました。だから勉強していてもついついバスケットボールのことを考えてしまう。でも、切り替えのスイッチを持ってから、どちらにも集中できるようになりました」。バスケットボールのシーズン中でも、7時間の睡眠時間を確保しながら勉強と両立し、薬剤師国家試験に合格できたのは、この切り替えの早さのおかげでしょう。 今後について尋ねると、「非常勤として薬剤師の仕事をしながらバスケットボールもやっていきたい」と岡崎さん。また、ドーピングに関してのアドバイスができる薬剤師として注目される『スポーツファーマシスト』にも挑戦し、「ドーピング検査をされる側の人間がする側になる初めての人になって、東京オリンピックにも貢献したい」と夢を広げています。 後輩である広島大学の学生たちにいただいたメッセージは、「広島大学の学生は真面目でアツい人が多いと思います。みんな頑張っていると思いますが、もっともっと視野を広げてほしい。いろいろなところにアンテナを張って、いろいろなことに興味を持ってほしい。そして興味を持ったことは調べて、自分の知識を増やしてほしい。それが行動につながると思います。『できるかな』と思うことはたいていできるので、やりたいことに全力で挑戦してほしいです」Bリーグ初年度をB2で戦った広島ドラゴンフライズ。来シーズンもB1昇格に向けて全力で戦う「プロとしてバスケットボールができるのは幸せなこと。だからプレー中は楽しもうと思っています。そして自分のやるべきこと、役割に100%以上の力を出すことを心掛けています」「プロはワンプレーがすごく重い」。1本のシュート、1つのミスが勝敗を分けてしまうのを試合はもちろん、練習でも感じているという022022

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