HU-plus(Vol.4)2017年8月号
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験所の建物からさらに歩くと、大木の先に室浜砲台跡の弾薬庫が現れた。コンクリートとれんがと石垣で造られた、宮島にはそぐわない建物がたたずんでいる。日露戦争宣戦布告直前の1904(明治37)年に完成し、自然の地形を巧みに生かした砲台が特徴だったものの、その後一度も実戦の機会はなく、1926(大正15)年に廃止されたと案内板には書かれている。和洋折衷で造られた明治後期の要塞が残っているのは珍しく、建築の専門家たちの注目を集めているそうだ。歴史を証言する建物は時を経て、現在に受け継がれている。実宮島自然植物実験所 本館(研究棟)実験所近くの海岸●自然植物実験所から海岸までは50mほど。最も本土に接近している場所で、対岸の大野まで300mくらいしかない。砂浜には野生のシカの姿も宮島山頂からの風景●「弥山」山頂は標高535m、その下に広がっている原始林は、世界遺産に指定され、本土と比べ自然度の高い植生が残されているヤマモガシの花●10mくらいの高さの木に成長する樹木で、8月上旬に白い花を咲かせる。宮島は分布の北限に近く、植物地理学的には貴重な種とされているトサムラサキ●晩秋から冬にかけて、成熟した果実が鮮やかな紫色に。枝にびっしりと果実が付くのも特徴。広島県では宮島にだけ生育が確認されているヤマザクラの紅葉●秋が深まる頃、オレンジ色に染まった葉が趣を感じさせる。4月には花が満開になり、海岸線から見ると海とのコントラストが美しいヤブツバキ●赤い花弁と束になった雄しべが目を引く。花が咲く時期は個体によってまちまちで、宮島では11月から6月と、咲いている期間が非常に長いマメヅタ●岩の上や樹木の幹に着生しているシダの一種。広島県では低地や山地に自生しているが、宮島では島内全域で見られる(写真:松村雅文氏提供)ミヤジマトンボ●国内では宮島にだけ見られ、潮の満ち引きに応じて海水と淡水が入れ替わる「潮汐湿地」と呼ばれる海岸に生息。シオカラトンボの仲間宮島自然植物実験所の坪田博美准教授●専門はコケ植物の系統・分類、生物地理学。ヒコビア植物観察会やデジタル自然史博物館、小中学校との連携など、地域貢献も積極的に行っている018

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