HU-plus(Vol.4)2017年8月号
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Q専門分野以外で関心のある本や作家は?A遠藤周作、司馬遼太郎、有吉佐和子、岩井志麻子などQ休日の過ごし方は?A掃除、洗濯、翌週の献立づくり、実験Q好きな広島の「食」とその理由は?A小イワシの刺身と焼きがき。他では食べられないごちそうQ今の学生と先生の学生時代と、気質で異なる点は?A国立大の学生は今も昔も真面目。バブル時代の学生と違い今の学生は堅実で物欲にまみれてなく立派Q広大で学ぶ学生の家族に一言A学生時代を広大で送れて良かったと思ってもらえるよう努力しますQ子どもの頃の夢は?Aシュヴァイツァーや野口英世の伝記を読み、子どもの時は医者になりたかったQ尊敬する人物は?A多過ぎて語りきれない Qこれだけは絶対誰にも負けない、負けたくないものは?Aやると決めたら時間がかかってもやり通す。諦めないしつこさQ最近の日本の社会や文化について意見をA情報が手に入れやすくなった反面、本当に価値ある情報を探し出す能力が身に付きにくくなっているQ1カ月休暇が取れたら、何をしたい?A3日間ゆっくり眠ってから海外旅行へQご家族についてのユニークなエピソードがあればA私の父は66年前、船で2カ月かかってケベック(カナダ)から日本に。国際結婚が珍しかった時代にお見合いで外国人と結婚した母もチャレンジャーだったと思う Q好きな俳優、タレントは?Aジョージ・クルーニーQ好きな言葉、座右の銘は?A「人間万事塞翁が馬」と「置かれた場所で咲きなさい」Q&Aヴィレヌーヴ准教授に一問一答熱力学と、基礎研究の面白さに魅かれて ヴィレヌーヴ真澄美准教授は、『熱力学』という学問の専門家。熱力学は産業革命とともに生まれ、発展してきたもので、熱や動力の振る舞いを追求する学問だ。現象そのものは目に見えない。こうした不思議な研究が行われてきた理由を、「人間の欲深さですね」と、ヴィレヌーヴ准教授は笑いながら語る。 産業革命によって、蒸気機関車や鉄道などが走りだすと、人は石炭などの燃料を買って動力源としなくても、ただで効率的に利益を生み出すエンジンがあるのではないかと思うようになる。「当時は本気で追求したようですが、それはできないとすぐに分かる。そんな簡単なものではありませんね」とヴィレヌーヴ准教授。しかしこの頃から、熱エネルギーの動きと仕事、物質を移送する際の現象などについての研究が発展し、熱力学は現在の形で完成した。 こうした歴史を踏まえながら、現在ヴィレヌーヴ准教授が取り組むのは、熱力学を使って、自然界の『界面』が関わる現象を解明する自然科学分野の研究。例えば、イネ科の植物は土の中の鉄を取り込み成長するが、鉄は本来水に溶けないため、成分を吸収しやすくする物質を根から分泌し、鉄を溶かして水と一緒に吸い上げる。「その物質がどのように根の細胞膜を通り抜けるのか、経緯を見ています」と、ヴィレヌーヴ准教授は手書きで記録したグラフの束を見せてくれた。界面張力を測定し、その結果を使って表面や界面で分子に何が起こっているかを解明していくという。「測定値が出てグラフの点が増えると、予想を超えた新しい発見があるかもしれない」とワクワクするそうだ。いつかは社会に役立つ、科学の人材を育てたい ヴィレヌーヴ准教授の名前が一躍有名になったのは、2017年の初めのこと。農研機構と共同で、グルテン不使用の100%米粉パンの製造技術を開発した。世界初の技術で、小麦アレルギーなどで悩む人には朗報となった。この研究でヴィレヌーヴ准教授が担当したのは、なぜグルテンのような増粘剤がなくてもパンが膨らむのか、そのメカニズムの解明。米粉に含まれるデンプンの『微粒子』が、生地が発酵する際に発生する二酸化炭素の泡の界面に集まって吸着し、泡を生地の中に閉じ込める役割を果たしていることを明らかにした。「技術を開発する時には、『なぜその技術でうまくいくのか』を解明すること、それが研究の目的です。その理論があれば、次に例えばチョコレートを入れたパンだったらうまくできるのか、作り始める前に分かるようになるからです」 今後、まだやりたいテーマがたくさんあるらしく、一番の苦労はマンパワーの不足。実験を継続していく基礎研究は地味な作業だが、「始めてみればきっとやりがいが分かります」とヴィレヌーヴ准教授は力を込める。技術立国日本にふさわしい、研究者や教育者など科学の人材を本気で育てたいそうだ。ゔぃれぬーぶ・ますみ●1994年から1年間、大手化粧品メーカーに勤務し洗顔フォームなどを開発。1998年、九州大学大学院理学研究科博士課程修了後、1998年徳島大学工学部助手、2002年埼玉大学大学院理工学研究科助教を経て、2013年から現職。2児の子育て中米粉分散水溶液にできた気泡の、表面張力の推移を自作の装置で測定イネ科の植物が土の中の鉄を吸い上げる時、物質がどのように根の細胞膜を通り過ぎるかを手書きのグラフで追う016

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