HU-plus(Vol.4)2017年8月号
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放射線の被ばくリスクの解明と、医・工学応用による有用性の実証に取り組む遠藤教授。福島では土壌サンプルや植物を採取し放射能を測定。葉脈がはっきり見えるのは放射能を含んでいるからだという2016年のヒロシマ『 』継ぐ展広島会場で、来場者に「灯ろうに込めるメッセージ」の説明をする小川さん。「『被爆体験伝承者』に関心を持ったのも、この活動で出会った被爆者の方々と多くの先輩の影響が大きいと思います」 遠藤教授が所属する量子エネルギー工学研究室では、広島・長崎の原爆のほか、チェルノブイリ原発事故、JCO東海村核燃料工場臨界事故、そして現在は福島第一原発事故の汚染調査や被ばく線量の測定・評価を継続的に行っている。これらの研究は、今後起こるかもしれない放射線災害時の防護に役立つものとして期待される。 放射線はあまり良いイメージで捉えられていないが、物をよく透過する性質を生かしてX線撮影やCT、最近では、微量の放射性検査薬を体内に入れ、集積する状態を画像化してがんを発見するPET診断など、医療分野での利用が進んでいる。一方で、粒子線やBNCT(中性子補足療法)による放射線治療を行う場合などは、2次粒子線の寄与の評価と精度の良い線量コントロールが求められる。これらが不十分だと正常組織の放射線被ばくによるリスクが高まる。遠藤研究室は精度の高い線量測定や評価法の研究やリスクの解明に取り組んでいる。 戦争を体験していない世代(第三世代)が、平和やヒロシマを考えるきっかけを作る。2015年から始まった「ヒロシマ『 』継ぐ展」は、若手クリエーターを中心に企画されている。そこではバーチャルの川に平和へのメッセージを込めた灯ろうを流すなど、子供や外国人にも関心を引く工夫がある。 この企画展に2016年から学生ボランティアで携わっているのが小川さんだ。「『継ぐ』と聞いて、はじめは『私たち若者が引き継いでいかなければ』とプレッシャーを感じつつも、何をすればよいのかわかりませんでした。でも、上の人も下の人も含めて“次の世代”なんだから、気負うことはない。先輩たちがリードする活動の中から、私にできることを探せばいいんだと気付きました」。被爆者への取材などの活動を続けるうちに新たな目標が生まれた。『被爆体験伝承者』になることだ。生存する被爆者が少なくなる中、被爆者の体験や思いを受け継ぐ人を広島市が養成する。「研修には3年ほどかかりますが、ぜひチャレンジしてみたいです」原発事故の調査や線量の測定評価を続ける。難しく考えず、世代が上の先輩の力も借りて。大学院工学研究科エネルギー環境部門 遠藤 暁教授被ばくのリスクを“解き明かす”小川 歩美さん 教育学部3年体験者からバトンを“受け継ぐ”009

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