HU-plus(Vol.3)2017年4月号
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Q趣味は?A美術館、絵画や彫刻を見るQ専門分野外の本で関心のあるジャンルは?A日本文学、特に近代から現在Q休日の過ごし方は?A本を読んでのんびりQ好きな広島の「食」とその理由は?A海苔と牡蠣。瀬戸内海を代表する養殖水産物だからQ今の学生と先生の学生時代と、気質で異なる点は?A素直さ、純粋さ、打ち込む情熱は今も昔も変わらないQ広大で学ぶ学生の家族に一言A学問の奥深さと面白さを知ることを応援してあげて欲しいQ尊敬する人物は?Aこれまで出会った先生、先輩、友人Qこれだけは絶対誰にも負けない、負けたくないものは?A海藻類の同定・培養Q最近の日本の社会や文化について意見をA少子高齢化が進む社会が活力を維持するには、人や地域の良さを掘り起こしていかなければと思うQ1カ月休暇がとれたら、何をしたい?A華道、茶道、和服の着付けQご家族についてのユニークなエピソードがあればA結婚2年目、日々発見があるQ得意なスポーツは?AダイビングとスキーQ好きな言葉、座右の銘は?A自主、自律、自学(出身高校の校訓)Q&A加藤准教授に一問一答海藻の多様さに魅せられて 加藤亜記准教授は、「藻類学」の日本では数少ない研究者だ。この世界に飛び込んだきっかけは、大学時代の臨海実習。フィールドワークで海藻を調べる実習があり、その時初めて食べ物としてではなく『生き物』としての『海藻』と出会う。 その後、博士研究員として北海道、神戸、沖縄にある大学を基点に日本を縦断し、海藻の系統分類に取り組んだ。2011年広島大学に着任した頃には、「日本に生育する海藻は約1,500種ですが、主な種はだいたい分類できるようになりました」 分類する中で、加藤准教授は『本当にこれでいいのか』という視点を必ず持つという。その上でこれまでの分類群の定義や体系の再検討に踏み込んでいく。研究の中で、ある種が日本の周辺に固有だとわかることがある。「その海藻が進化の過程でどう分布を広げていったかを知る手がかりになります」と目を輝かせる。 加藤准教授が今いちばん力を入れて取り組んでいるのは、生きた『石』になるサンゴモ類の研究。体の重量の9割が石灰質で、ある種の化学物質を生産する。それが造礁サンゴ幼生の着底・変態を助けサンゴ礁の形成に貢献する。しかし、「温帯でこれが広がると問題です。ウニの過剰な増殖が促されて、海藻が食べ尽くされるので、藻場が失われた状態が続くのです」。海底にほとんどの海藻が見られなくなる『磯焼け』という現象だ。 磯焼けは世界各地で起きており、近年、温暖化によって拡大している。加藤准教授は、豊後水道から瀬戸内をモデル地域として、「磯焼け」の持続要因となるサンゴモ類の出現種と環境との関連を研究中だ。 こうした環境変化に関する研究に加え、地元産海藻の増養殖における問題にも取り組んでいる。いろいろな分野で、海藻の知識が応用される時代が来ている 地球表面の7割を占める海の中は、謎でいっぱいだ。海藻の分野だけでもまだよく分かっていない分類群がある。解明するには長い時間がかかりそうだが、人の暮らしの中でも、思わぬところで海藻に出会うことになると加藤准教授。海藻から抽出された寒天やアルギン酸などはすでに食品に利用され、バイオエタノールは工業用に試験研究されている。「そうした応用にも興味はありますが、私の研究は産業に直結する内容ではないので、人類の知の水平線を広げるために役立てたいですね。海外の研究者とも交流を深め、海藻という生き物の研究の発展に貢献するのが私の役割」と力強く言い切る。 学生にはこう伝えたいそうだ。「大学の時まで海藻を学問の対象として見ていなかった私のように、その先に広がる世界に目を閉じたままではなく、まずは興味を持って欲しい。ローカルな竹原という場所から、世界の最前線が見られます」かとう・あき●2003年北海道大学で学位取得後、北海道大学COE研究員、神戸大学日本学術振興会特別研究員、琉球大学COE研究員などを経て、2011年より広島大学大学院生物圏科学研究科瀬戸内圏フィールド科学教育研究センター竹原ステーション(水産実験所)助教。2017年同研究科准教授。大崎上島町食文化海藻塾評議員など。[受賞]2007年日本藻類学会研究奨励賞竹原ステーションでは海藻類の分類や培養などに取り組む。瀬戸内海を拠点としながら、国内外の海で共同研究者と標本採集や潜水調査も行う016

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