HU-plus(Vol.3)2017年4月号
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人にも、牛にもゆとりをもたらす、自動搾乳ロボットの導入。●搾乳ロボット 北は鏡山、西はががら山に接した傾斜面に位置する東広島キャンパスの東端にあるのが広島大学農場(正式名称:大学院生物圏科学研究科附属瀬戸内圏フィールド科学教育研究センター西条ステーション)です。ここでは乳牛、肉牛、綿羊、ヤギを飼育していて、学生たちが農場実習を通して「自然・命との関わり」を学び、自然に対する感性を養うための場になっています。地域市民の方々の見学や中・高校生の体験実習の場としても活用されています。 乳牛の搾乳を行っているのが「搾乳ロボット」です。乳牛にとって搾乳は1日も欠かすことができない大切なものであり、人にとっては大変に時間のかかる作業です。このマシンは24時間、365日いつでも、無人で搾乳することが可能。人をその作業から解放することはもちろんですが、中に入ると自動で餌が出る仕組みにより、牛が自発的に搾乳に向かうことで牛のストレスを軽減するというメリットもあります。さらにすべての牛は1頭1頭を個別に認識するためのICタグ付きの首輪を装着していますが、搾乳ロボットはその首輪にある種々のセンサーで個体ごとの活動量や発情・反芻状況、搾乳の際には体重や乳量、乳質、乳温などのデータを読み取ってコンピュータにそのデータを蓄積するので、牛の状態を総合的に把握し、管理することができるのです。牛はいつでもこのマシンに入ることができますが、前回からの搾乳時間や日乳量などからマシンが搾乳可能かどうかを判断し、搾乳不可能とされた牛はそのまま出口ゲートから出すという見極めも行っています。 酪農の技術が進んだオランダから取り入れたこの自動の搾乳ロボットは、一部人の手によるメンテナンスも必要ではありますが、「ゆとりある酪農経営」につながっています。また、近年重要視されているカウコンフォート(牛にとって快適な環境)作りにも役立つ上、研究のためのデータの蓄積にも大きな成果を上げています。1.2.3.レリー社製(オランダ)の搾乳ロボット。搾乳可能牛がロボット内に進入すると、ロボットアームが乳房の下に入り込み、洗浄の上で搾乳し、最後に乳頭の消毒も行います。搾乳が終了すると機器のスチーム洗浄も自動で行うので衛生的です4.搾乳ロボットが牛のICタグ付きの首輪から読み取った1頭1頭のデータは、すべてコンピュータに蓄積されます5.牛の発情や妊娠などはアナログな方法と併用で管理されています日光浴をする乳牛たち。人工授精で年間を通じて子牛が誕生し、搾乳できるようになるまで育つ姿を見ることができます学内でも進む、技術イノベーション学外の企業や研究機関との共同研究だけではなく、広大のイノベーションは学内でも着実に進んでいます。農場の搾乳ロボットや内視鏡手術を支援するロボット、蔵書冊数が増え続ける図書の分野にも新たなシステムが導入され、変革をもたらしています。■1■2■3■4■5009

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