HU-plus(Vol.2)2017年1月号
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トップにはロマンを、夢やチャレンジを語る役割もある。金井誠太(かない・せいた)マツダ株式会社 代表取締役会長1950年広島県生まれ。1974年東京工業大学工学部を卒業し、東洋工業(現マツダ)入社。2002年発売の初代アテンザの開発リーダーを務める。2010年に発表されたスカイアクティブ技術の開発を指揮。2011年代表取締役副社長執行役員、2013年代表取締役副会長を経て、2014年代表取締役会長に就任。公益財団法人マツダ財団理事長。トップとしての思い越智:金井会長は経営者として活躍される前は一貫してチーフエンジニアとして活躍されたと伺っています。初代アテンザの主査を務められて130以上の賞を受賞され、「スカイアクティブ技術※1」の開発も主導されました。会社の代表取締役としての今と技術者時代を比べて、どんな点が変わりましたか。金井:賞の数まではっきりと覚えていませんが、開発畑が長かったのは確かです。ただ、開発といいながら「どんな商品をつくり、どんなふうにビジネス展開するか」というマネージャーの役割も担っていました。ですから、いざ経営者になったときも、そんなに意識のズレはなかったと思います。越智:私も医者として、長く医療現場で過ごしてきました。患者さんと向き合って治療をしながら、新しい治療法の研究に取り組む毎日でした。病院長を経験したとはいえ、学長に就任してからは経営に対する意識が大きく変わったように思います。金井会長の場合、経営者としての難しさはあまり感じられなかったと?金井:そうですね。経営者の意志が入ることは当然ありますが、大半はいろんな人の意見を聞きながらやっています。規模の大きい会社では、人それぞれが得意分野を持っている。財務や法律に強い人、技術に長けた人、製造に詳しい人、あるいは販売・営業に手慣れた人。結局、それぞれのカラーを持った人間がいろいろ集まる中で、意志決定をしていくわけです。私のような立場の人間には、ロマンを語る役割もあると思うのです。例えば、私がそろばん勘定だけで声を発したら、経営陣はみんなそれに迎合してしまう。夢やチャレンジを語りながら、会社全体のバランスを取ることが理想ですね。越智:今おっしゃっていただいたことは、大学経営にも通ずることです。専門家が多い中で、トップとしていかに舵を取るか。マツダでは“Zoom-Zoom”のように新しい方向性を打ち出し、成功を収めました。マツダのような大きな組織で、問題をクリアし変革を進めていくことは、決してたやすくはなかったと思いますが。金井:もちろん簡単なことではありませんでした。ただ、社内で問題がある場合、たいていの人はその問題に気付いています。単純にその問題自体に焦点を当てて議論するのではなく、上位概念に立ち返ることを意識しましたね。「この会社をどうしたいのか」「我々はどこへ向かうべきか」という原点を明確にするわけです。意見が一致しない時こそ、とにかくさかのぼって追求する。「何のためにこの提案をするのか」「上位概念は何なのか」と。上に行けば行くほど、どこかで目指すものが一致してきます。その一致しているところ005

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