来る東京五輪にちなみ、今号はスポーツに関わる広島大学の人や取り組みをご紹介します。プレイする側と観戦する側、どちらも元気づけるスポーツ。広島大学はその魅力を支え、発信することで、スポーツのさらなる可能性を開きます。 来る東京五輪にちなみ、今号はスポーツに関わる広島大学の人や取り組みをご紹介します。プレイする側と観戦する側、どちらも元気づけるスポーツ。広島大学はその魅力を支え、発信することで、スポーツのさらなる可能性を開きます。 08Hiroshima University Magazine 体温調節に関わる基礎研究に加え、暑熱環境下での運動による高体温や疲労、運動能力の低下、熱中症などを防ぐ「暑さ対策」の応用研究をしています。日本の夏は高温多湿ですが四季があるので、日本人は1年中高い発汗機能が必要とされているわけではありません。そのため、日本の気候の中で発汗機能を最大限生かすためには、独自の研究や対策が求められます。そこで、国立スポーツ科学センター特別プロジェクトからの依頼を受け、研究員として日本の選手の競技力向上とメダル獲得のための「暑さ対策」を研究・実験しています。 体を冷やすのは内部からか外部からのどちらかしかありません。内部から冷やす方法として微細な氷と液体が混ざるシャーベット状の飲料「アイススラリー」を開発しました。最も適した摂取量やタイミングを検討し、酷暑の中でもパフォーマンスを落とさず最高の結果が残せるのかをトップアスリートたちに実践してもらい、エビデンスを得ています。外部から冷やす方法としてはどの部位の冷却が効率的なのかなどを研究し、アイスパックを効果的に配置できる「クーリングベスト」をスポーツメーカーと共同開発し、競技の現場で活用してもらっています。また、バケツに氷水を張って手を浸けることも競技現場では推奨しています。手を冷やすと体の中に冷たい血液が流れ体温の低下に有効です。これからの夏季のスポーツイベントでは選手たちが試合の合間にバケツに手を入れている光景が見られるかもしれません。 これらの知見をトップアスリートだけでなく、広く一般の方にも展開・応用することは、競技力向上のほか、夏季におけるスポーツの安全性を高め、スポーツに関わる全ての人の熱中症予防に役立ちます。スポーツ観戦については当たり前のことですが、睡眠、食事をきっちり取りコンディションを整えておくことが基本です。さらに、5日くらい前から暑さに慣れるために汗をかくトレーニングをしておくこと。当日は冷たい飲み物と体を外から冷やす準備をした上で、涼しいところで休憩をとることも有効です。暑さ対策を万全にして、選手には最高のパフォーマンスを見せてほしいですし、観客の皆さんには元気に楽しく観戦してほしいですね。01選手の力を引き出すアイススラリーとクーリングベストの効果を測定長谷川 博大学院人間社会科学研究科 教授 / 専門分野:環境生理学酷暑のテニスコートでは地面の温度は50度を超える高温多湿の夏に最高のパフォーマンスを実現する。
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