HU-plus (vol.12) 2020年度5月号
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ボクシングにも精力的に取り組んだ展覧会のお知らせ画業25周年 芸能生活45周年記念片岡鶴太郎展 顔 -faces-場所 奥田元宋・小由女美術館(広島県三次市)期間 9/15(火)~10/25(日) 片岡:子どものころからボクシング観戦が好きで。ちょうどお笑いだけでなく、役者の仕事に意欲を燃やし始めていたころ、体づくりのためにボクシングを始めました。役が制限されないように、体をきちんと整えたかったのです。さらにプロボクサーのライセンスが取れる年齢制限まであと1年というタイミングで、今を逃したらもうチャンスはないと思い、1年間でライセンスを取得できるよう没頭しました。32歳の時でした。越智:最後の機会だからこその集中力、というものがあったのでしょうね。片岡さんは画家としてもご活躍です。絵を描かれるようになったきっかけは何だったのでしょうか。片岡:隣家の庭に咲いていた椿です。38歳のある寒い朝、ふと気配を感じて振り返った時に見た赤い椿が、誰にも見られずとも自分の生を全うする姿に心を揺さぶられたのです。この感動をなんとか表現したいと考えた時に「絵」だと直感し、独学で始めました。越智:ボクシング、役者、絵画など、さまざまなことに精力的に取り組まれていますね。片岡さんの「魂の赴くままに成し遂げる」という生き方は、以前本学にお越しいただいた京都大学の本庶佑先生の「有志竟成(ゆうしきょうせい:志を曲げることなく堅持していけば、必ず成し遂げられる)」という言葉にも通じると感じます。ヨガで出合う至福の瞬間好きなものを自分で見つけ、決断する越智:さらにヨガのインストラクターも務めておられます。片岡:はい。正確にはインド政府公認の「プロフェッショナルヨガ検定・インストラクター」です。越智:片岡さんが行われるヨガはストイックすぎるとも話題になりますが、ご本人からするとやはり楽しいものなのでしょうか。片岡:もちろんそうです。外から見ると苦行かもしれませんが、僕にとってはヨガをするひと時が至福の時間です。もともとはヨガではなく、尊敬するブッタや空海、スティーブ・ジョブズなどと同様に、瞑想をしたいと思っていました。ところがある方が、「瞑想は実はヨガの最終プロットである」と教えてくださり、ヨガを始めようと決意しました。越智:なるほど。ヨガの魅力とは何でしょうか。片岡:まれに訪れる、これ以上ない幸福感ですね。毎回味わえるものでも追い求めるものでもないと考えていますが、温かく心地よい、その瞬間を心待ちにしています。越智:片岡さんの行動力はすごいですね。椿の絵もそうですが、気になることにはすぐに取り組まれている印象です。多様なものに挑戦される、片岡さんの流儀とは何でしょうか。片岡:興味を抱いたことは絶対にやってみることです。「これをやってみたい」と感じることは、自発的かと思いきや、実は非常に他動的なんです。ある意味、天からのギフトであると考えています。第六感や思い付きを信用する人は少ないのですが、その物事に専心する中で、「よくぞ着手した」と言わんばかりの体験や、魂が歓喜するような喜びに出合えるのです。越智:他動的であるという点において、「流れに従う」ことと近いかもしれませんね。私の経験を申し上げますと、自分の決断だけで進んできたわけではなく、他者や状況に流されつつ、その先でなんとか努力を重ねてきた結果が今だと感じています。片岡:何かに導かれているのかもしれませんね。私は自分が「挑戦したい」と直感した物事は、活路が見え、天からの祝福を感じられるその時まで信じ続けたいと思っています。越智:大学はどのようにあるべきだと思われますか。片岡:学生が主体となり自らの「志」を学び、見つける場だと思います。そして、学生の志をサポートすることが大学の役目ではないでしょうか。越智:私も学生の皆さんの勉学への意欲が高まるような、教育を受けやすい環境を整えることが、今最も大切だと感じています。片岡:近年、若者が夢を持たなくなっているのではと、少し残念に思っています。自分の好きなものは自分で発見しなければいけないし、追求するのかどうか、自分で決断しなければならない。とにかく、自分が好きなことを大切にしてほしいですね。そして丁寧に経験を積み重ねてください。越智:学生には大学での学びを通じて、自らのやりたいことを見つけ、極めてほしいと切望します。本日はありがとうございました。06Hiroshima University Magazine

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