武田 正文浄土真宗本願寺派 高善寺 副住職(島根県邑智郡邑南町)さんたけだ・まさふみ/広島大学教育学部2007年度卒業、大学院教育学研究科博士課程前期(心理学専攻)2010年度修了、臨床心理士の資格を取得。広島大学1年生の夏休みに得度。広島県三原病院・精神科で3年間勤務した後、実家である浄土真宗本願寺派高善寺で副住職の仕事とスクールカウンセラーなど、臨床心理士の資格を生かして地域に貢献している。教育学部4年さん山下 奈那子Report学生広報ディレクター「今まで通りのお寺ではいけない」という言葉が印象に残りました。大学時代に学ばれた、心理学と仏教を結び発信するという新しいお寺の形を見せていただいたと思います。「地域あってのお寺」を根底にさまざまな取り組みをされており、挑戦することの大切さを学びました。 実家のお寺で僧侶をする傍ら、臨床心理士として地元の小中高校や企業でカウンセラーをしています。寺の長男に生まれ、子どもの頃から僧侶になると思っていました。宗教以外の学びでお寺を変えられないかと考え、大学院では心理学に進み、在学中に得度(出家して受戒すること)と臨床心理士の資格取得という今の仕事の基本を身に付けました。 スクールカウンセラーとして学校に伺う中で、この町に足りないと感じたものをできる限りお寺で提供しています。例えば、町内には学習塾がほとんどありません。そこで、寺子屋を開き勉強を教えています。同時に不登校や引きこもりの子どもたちを支援しています。目の前の人が幸せに生きるのを支えることは宗教の教えに沿ったお寺の役割ですから。 プログラミングの授業もお寺でやっています。本堂にドローンを持ち込み飛ばしたことも。子どもにも大人にも喜んでもらえ、田舎にいても最先端技術に触れられるのだと分かってもらえたと思います。また、若い方に仏教を身近に感じてもらったり、自力でお寺に行けないお年寄りが家で法話を聞けたりできるよう、「仏心チャンネル」というYouTubeを開始。ご本堂のYouTubeスタジオから世界に発信しています。お寺に来る子どもたちは、私をユーチューバーと思っているんじゃないでしょうか。なりたい職業の上位に挙がるユーチューバーが身近にいることが子どもの夢やこの町の可能性になればいいと思っています。 在学中はバンド活動やバーでのアルバイトなど、いろいろとチャレンジしました。アルバイト先のバーのマスターは、同じ広島大学出身で偶然にも住職のお孫さんだったので、仲良くしてもらいました。「新しいことの始め方」を教わり、そのバーを拠点に講演や音楽のイベントを企画・実行しました。その経験が今お寺でイベントをする際に役立っています。イベントに招いた人も含め、面白い大人の存在が自分の人生に大きな影響を与えてくれました。 広島大学はワクワクする大学だと思います。広大ネットワークは広く、その人脈をたどっていけば、知りたいことや実現したいことに到達できます。学生の皆さんには、勉強はもちろんですが、楽しいことにどんどん挑戦してほしいと思います。失敗したり、飽きたりしたら、やめればいい。チャレンジしないのがリスクになる時代です。意味がないと思えることも、必ず自分の身になります。 今までとは違う価値観を持ち込み、誰もがお寺に行けば何とかなると思ってもらいたいと考えています。そしてその考えに共感して協力してくれる行政や学校、住民の皆さんと力を合わせて、良い町にしたいと思います。人口減少などで寺院が消滅する中で、お寺が地域を支えていくという構造が一つのモデルになればいいですね。僧侶とカウンセラー、2足のわらじ目の前にいる人の幸せを願ってとく ど武田さんのYouTubeチャンネルはこちら人脈を生かしてやりたいことに挑戦チャレンジしないことがリスクに20Hiroshima University Magazine教育学部・大学院教育学研究科 出身
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