HU-plus (vol.12) 2020年度5月号
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 日本各地に残る伝統工芸の数々。自然の素材を使った職人の手仕事が光る工芸品は、地域の文化として長年受け継がれてきました。それが今、後継者不足などにより、衰退の危機に直面しているのをご存知でしょうか。文学部の「日本工芸史学応用研究」では、文献資料や実習などを通じて広島県の伝統工芸を学びます。伝統工芸品を美術史的、歴史的に考察する力を養うとともに、地域の人々との交流や伝統文化・産業の掘り起こしによる地域社会の活性化を目指しています。 授業は主に、日本の伝統工芸についての基礎知識の学習と、工芸品を作る過程を学ぶ実習の二つで構成されます。実習では、見学依頼から段取りまで、全て学生たちで行います。備後畳表の材料となる藺草を一から作ったり、大竹手漉き和紙による鯉のぼりの手描きに挑戦したり。これまでも地域のさまざまな工芸品に触れてきました。また、既存の工芸品を現代の生活にどう生かすのかも考察。「広島の工芸品を組み合わせて、お茶の空間をプロデュースしよう」「それなら、この前の実習先の三原だるまを茶筒代わりにしてはどうか」「だるまを入れる袋は備後絣で作ろう」「実習で作った備後藺草の円座を座布団にしようか」。ディスカッションする学生たちは非常に生き生きとしています。制作現場を見ているからこそ、それぞれの特徴を生かした柔軟な発想が生まれます。 「職人の技を目の当たりにし、ものづくりの苦労を体験することで、ものを大切にする心が育まれます。学生には、“手仕事の美しさと価値”が分かるようになってほしい」と担当教員の伊藤准教授。ものづくりを知ることは、日本の文化を考えることにもつながります。「人間の手によって自然が新しい形となり、それが生活を豊かにする。自然との調和を重んじる日本人の生き方や文化を感じ取れるのでは」。広島大学が実施する「地域の元気応援プロジェクト」事業などと連携しながら、広島の伝統工芸や地域との関わり方、さらには日本の文化まで、五感を使って楽しく学べる授業です。実習では職人さんたちの思いに直接触れることで伝統産業の価値や現状を知り、目を向けることの重要性を感じました。企画が徐々に形になってゆくことに、やりがいを感じます。学生がおすすめする広島大学の「ぶち」おもしろい講義を各回ご紹介します。文学部 3年さん多川 大紀広大講義日本工芸史学応用研究伝統工芸品の魅力に出合う!広島の職人に学ぶ日本の手仕事とても(広島弁)17vol.04【】Student’s Voice!完成した時の達成感はひとしおです。三原だるまの茶入れ決めの様子。い ぐさかすりすぐさい担当教員:専門分野:伊藤 奈保子 准教授人文学/芸術学/美術史開講部局:科目区分:文学部専門教育(大学院人間社会科学研究科)実習では藺草を植え、干すことも体験。

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