宮下 美香 (みやした みか)研究室患者さんのQOL向上を目指し、 がん看護の専門性を生かす学問分野:老年・がん看護開発学/看護学/臨床看護学キーワード:がん、リハビリ、看護人数:学部生6人、大学院生4人、教員3人その他連携機関:熊本大学、カンザス大学、パーカーアドベンティスト病院、インディアナ大学※QOL (Quality of Life)治療や療養生活を送る患者さんの身体的、精神的、社会的、スピリチュアル、全てを含めた生活の質を意味する。06teamDATA大学院医系科学研究科 保健学分野 日本人の死因第一位である、がん。一般的に知られていないが、化学療法によるがん治療は、軽い物忘れ程度の認知機能障害を引き起こすことが分かっている。がん看護を専門とする宮下教授の研究室は、がん治療によって低下した認知機能を改善するために「運動」に着目。日米で共同研究を行っている。 研究に使うのは、ペダルとタブレット端末を用いたオリジナルトレーニング装置。ペダルをこぎながらゲームをすることで、記憶力や計算力を鍛えられる。運動による血流上昇と、ゲームを組み合わせることにより、脳が活性化するという原理に基づく。認知症の高齢者向けに開発されたトレーニング装置のアレンジだ。同時に複数の作業に取り組むので認知機能のさらなる強化も期待されている。 研究室では、化学療法を受けた患者さんに協力を要請。トレーニング前後で認知機能が向上したかどうか検証している。まだ参加者の数は少ないが、体験した人には「頭がすっきりした」と好評だ。「手軽なので、自宅でもトレーニングしてもらえる。ゆくゆくは商品化につながるかもしれません」と宮下教授は意気込む。 「今後は日米でデータを集め、比較する予定。文化的背景の違いが効果の出方に表れると考えています。この分野の第一人者である米国の研究者の先生方と、連携しながら検証していきたい」 このほかにも研究室では認知症を持つ高齢者の家族のケアや症状評価の尺度開発など、さまざまな研究を行っている。メンバーそれぞれが関心に応じて自由なテーマに取り組んでいるが「患者さん、ご家族の最良の生活を支える看護の開発」という研究理念は一貫している。教授はコミュニケーションを大切にし、メンバーの自律的な研究活動を支援している。 研究室はがん看護専門看護師コースを担当する。「学生同士の議論は学びを深めてくれます。志を同じくする仲間と学び、支え合うことは、将来臨床で専門看護師として働く上でも、自身の実践力向上につながるはず」。研究室の目標は、各人が研究を論文化し、優れた看護実践者を育成すること。地道に成果を積み重ね、大規模な研究に取り組む力を蓄えていく。ペダルを使ったトレーニングの様子※がん治療による認知機能障害をトレーニングで改善日米共同研究で、エビデンスを積み重ねる16Hiroshima University Magazine
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