HU-plus (vol.11) 2020年度1月号
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被爆建物(本川小学校)で行った個展「ヒロシマのピエタ展」より彫刻『さつきの魂』自分ならではのリアリティを作品に込める一鍬田 徹 教授大学院教育学研究科 造形芸術教育学講座専門:彫刻書道部活動頻度:週2回(水・土)主な活動場所:サークル棟1階創作室主な発表イベントなど:ゆかたまつり、大学祭など代表:帶包采夢(おびかね あやめ)さん型破りなパフォーマンスを墨と筆で「“自分”がリアルに感じたことを作品制作の出発点にする」。これが私のこだわりです。自分の身の上に起きた事象を表現していくことを大切にしています。今から約20年前、親しくしていた叔母が亡くなった時に作品制作の大きなテーマが見えてきました。病室で喪失感に打ちひしがれていた私の耳に、隣の中学校から元気な子どもたちの声が届いたのです。隣り合わせにある生と死。その二つの存在を強く実感したことがきっかけとなり、以来、「生と死のリアリティー」をテーマに作品をつくり続けています。2007年には同様のテーマで、被爆建物である広島市の本川小学校平和資料館にて個展「ヒロシマのピエタ展」を開催しました。そのほか自己表現だけでなく、公共の場でのパブリックアートや、病院に展示するホスピタルアートなども制作。アートができることとは何か、自分の発想や技術で社会にどのように貢献できるのかを考えて作品づくりをしています。広島大学にゆかりのある主な作品は、大学病院の『FOUR SEASONS TREE』や、医学資料館に展示している『過去と未来に思いをはせるための椅子』、附属三原学校園の100周年を記念した『永遠の庭』など。『FOUR SEASONS TREE』は広島の四季を味わえるステンドグラスのこれまでの書道のイメージを覆すダイナミックなパフォーマンスで、観る人に「筆を持ってみたい」と感じてもらえたら。そんな思いで日々作品づくりに向き合っています。主な発表の場は、夏の「ゆかたまつり」と秋の「大学祭」。今年のゆかたまつりでは、「かぐや姫」をテーマに「これまでにない書道パフォーマンスをしよう」と演出を練りました。そこで出たアイデアが、竹の絵が描かれた紙を突き破って、かぐや姫が作品から飛び出すというもの。実現のために、紙やパネルにさまざまな工夫を施しました。当日は来場者の方々から歓声が上がり、好評だったと聞いて感無量でした。大学祭では「自分を漢字一文字で表すなら?」という全体テーマのもと、部員それぞれが作品を展示。一般の方向けに体験コーナーも設置し、書道の楽しさを感じていただくことができました。今後は、学内にとどまらず、企業のパーティーや老人ホームなど、学外でもパフォーマンスを披露する機会をつくり、書道の魅力を届けたいと思います。ような作品です。四季を感じにくい病院でも、患者さんや病院スタッフなど多くの方々に昼も夜も楽しんでいただけるように、最適なデザインを追求しました。光の当て方や設置の仕方の工夫次第で空間を演出できる楽しさが彫刻の魅力。自分が納得できる作品づくりとアートを通じた社会貢献を今後も続けていきたいと思っています。な人々ArtArtひとくわだとおる霞キャンパス・大学病院入口にある『FOUR SEASONS TREE』の制作時模型10Hiroshima University Magazine

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