国民的なレジャーとしてたくさんの人々が楽しむ「釣り」。「釣りの科学」は、釣りを愛する教員が持ち回りで展開する講義です。釣りは、竿を出して魚が釣れるのをただぼーっと待つだけの行為ではありません。釣れなければ場所、餌、魚を狙う深さ、仕掛けと、釣るための方法をあれこれと考える必要があります。頭の中からアイデアを引っ張り出し、それを組み合わせて課題の発見・解決を目指すプロセスは、学問や社会の場においても同じ。釣りというテーマを通じて、このような行為の重要性に気付いてもらうことが講義の目的です。 「釣りをテーマにしていますが、そこを入り口にして生物、環境、保全、食資源などさまざまな学問を学び、教養を身に付けてもらうことを目指しています」と語るのは、担当教員である海野徹也教授。ユニークなテーマに「釣られて」多くの学生が受講する、大人気の講義となっています。 講義は毎回工夫が凝らされ、学生たちを飽きさせません。水産庁の「釣人専門官※」をゲストに招き、漁業権や水産資源について解説していただく機会もあります。また古澤修一教授が担当する回では、竿の実物を教室に持ち込んで講義を進行。軽い擬餌針を20m以上も飛ばす「フライフィッシング」を題材とした回では、受講生に実際に竿を振ってもらいます。その上で、なぜ軽いものが遠くまで飛ぶのか、キャスティング(ルアー・フライを投げること)の理論を物理学の視点からしっかり解説します。 講義では毎回レポート課題が出されることも特徴です。内容は「アユのまったく新しい釣り方を考えなさい」「魚の種の保全優先順位を考えなさい」など、学生の思考力を試すものばかり。いろいろなアイデアが出され、採点する教員にとっても楽しい発見が多いと言います。 釣りをする人もそうでない人も、「考える力」と「創造力」が楽しく身に付く講義です。釣りが趣味の自分でも、初めて聞くこと、学ぶことが「大漁」でした!講義で、海洋のごみが水産資源に被害を与えている問題を知り、他の人のごみも持ち帰るようになりました。 学生がおすすめする広島大学の「ぶち」おもしろい講義を各回ご紹介します。理学部 4年さん井上 改斗ぶち広大講義釣りの科学「釣り」のエッセンスは学問、そして社会にも通じる?!さまざまな観点から釣りにスポットライトを当てるとても(広島弁)17vol.02おもしろい【】Student’s Voice!履修希望が多く、毎回抽選になるほどの人気。※釣りについての専門知識を持つ水産庁職員で、釣り人と行政の間で調整を行っている。講義室にマイ竿を持ってくる学生も。道具は先生の私物!教科区分:教養教育担当教員:専門分野:古澤 修一 教授農学/動物生命科学/統合動物科学(大学院統合生命科学研究科)(右)主担当教員:専門分野:海野 徹也 教授農学/水圏応用科学/水圏生産科学(大学院統合生命科学研究科)(左)
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