早坂 康隆 (はやさか やすたか)研究室直径0.1 ミリの鉱物試料をもとに 日本最古の岩石を発見・測定学問分野:数物系科学/地球惑星科学/地質学キーワード:岩石学/構造地質学/地質年代学/日本列島人数:学部生2人、大学院生2人、教員1人、研究員1人参画プロジェクト:広島大学インキュベーション事業「プレート収束域の物質科学研究拠点」(略称:HiPeR)04teamDATA大学院理学研究科 地球惑星システム学専攻 地球惑星物質学グループ (岩石学研究) 地球惑星システム学専攻は、火山、地震、化石、資源、隕石などの専門家が集まり、一つのシステムとしての太陽系や地球の歴史、成り立ち、将来などを各側面から研究する。早坂研究室は岩石学を通して地球や日本列島の歴史を探っている。 ユーラシア大陸の内陸には古い岩石が多いが、その端から分離した日本列島では4億年より古い岩石は大変珍しい存在だ。しかし、早坂准教授は近畿地方から中国地方にかけて広がる「舞鶴帯」で、4~5億年前の花こう岩や18億年前の砂粒を見つけ、より古い岩石を探していた。2017年5月、舞鶴帯の西端、島根県津和野町の林道で研究室のメンバーが採取した岩石を測定したところ、25億年前の岩石であることが判明。世紀の発見に研究室は沸き立ち、国際シンポジウムでも日本最古の岩石と認定された。この歴史的発見が日本列島の成り立ちの解明に役立つことは間違いないだろう。 大発見を可能にしたのは、研究室が強みとする岩石の年代測定技術だ。年代測定には岩石に含まれる鉱物ジルコン中のウランと鉛の同位体比を利用する。さらに、直径0.1ミリのジルコン粒の中心部と周囲を測り分ける「ウラン‒鉛局所年代測定」で年代を特定する。導入当時世界に4台しかなかった計測装置を備えており、いち早くノウハウを蓄積し、今やジルコンのウラン・鉛年代学における日本の中心的存在と称賛されるほどだ。 もう一つの強みは、測定すべき岩石試料をフィールドワークで探し出すスタイル。長期休暇には各自が担当地域に赴き、年1、2度は全員で地質調査を行う徹底ぶり。道なき山野を歩き回ることも多々あるので「ワイルド系学生」が自然と集まる。沿岸部への遠征では釣りで自給自足することもあるという。学術雑誌の論文になるようなまとまった成果が出るまで最低でも数年以上を要する分野なので、研究に没頭する熱心な学生が多い。 早坂准教授は自主・独立を旨とし、統率を心掛けたことはないという。ただ、先輩が惜しみなく後輩を指導する伝統はおのずと受け継がれる。世代を超えて地道な研究を継承することで、日本列島の形成について、教科書に載るような揺るぎない説を確立するのが目標だ。フィールドワークでの研究試料の収集、分析を繰り返す研究への執念と情熱が、歴史的発見を生んだ16Hiroshima University Magazine
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