HU-plus (vol.10) 2019年度8月号
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宇宙は絶え間なく進化し、膨張を続けている 宇宙は、進化し続ける空間です。ビッグバン(大爆発)による誕生後、宇宙には水素やヘリウムなどの軽い元素しか存在しませんでしたが、それらが星をつくり、星の中でさまざまな元素が生み出されました。宇宙には、電磁波で捉えられない暗黒物質もかなり多く存在すると考えられていますが、星や星間物質を構成するガスは基本的に地球上に存在する元素のみで構成されていることが分かっています。 また、宇宙は誕生以来膨張を続けています。これは、遠いところにある銀河ほど速く遠ざかっているという観測事実から導き出されます。近年の研究では、宇宙の膨張が加速していることも判明しました。宇宙の中の物質量は一定であるとすると、このまま加速度的に膨張を続けると、希薄で静穏になるという考えもあります。一方で、宇宙の外の世界がどうなっているのか、どのような力が働いて膨張が加速しているのかは分かっていません。もしかすると、遠い将来宇宙が収縮に転じる可能性もあるのです。 今後10~20年で大きく進むと予測されるのが、地球外生物に関する研究です。近年欧米の研究機関も力を入れているテーマであり、世間の人々の関心も高いでしょう。「太陽以外の星の周りを回る惑星において、生物が存在する証拠として最初に見つかるのは、植物で覆われた星からの反射光スペクトルの特徴(葉緑体は可視光は吸収するが赤外線はよく反射する)かもしれません」 星から地球に届くのは、私たちが普段夜空に見ている光(可視光)だけではありません。実はそれ以外に、目に見えない赤外線やX線、ガンマ線などの電磁波も届いています。戦後になって観測技術が進歩し、それらのデータも計測できるようになると、宇宙の研究は急激に発展しました。計測可能となったさまざまな波長のデータを相互に対応させることで、宇宙の謎に包まれていた部分が徐々に明らかになりました。 例えば、ガンマ線バーストという爆発現象がありますが、この爆発はいつどこで起こるのか予測できず、継続時間は0.1~数十秒しかないことから、通常、視野が狭い可視光望遠鏡の観測で見つけ出すことは困難です。しかし、視野の広いガンマ線望遠鏡で探し当てて、X線や可視光でその残光の観測を促すことができます。広島大学では、可視赤外線とX線・ガンマ線のグループが共同で研究を行い、宇宙の突発現象をさまざまな波長でモニタリングしています。 広島大学の宇宙研究を支えているのが口径1.5mの光学望遠鏡「かなた」です。同クラスの望遠鏡より3~5倍も速く動かせるので、突発的に光って暗くなる天体を逃さず捉えられます。また、赤外線と可視光を同時に観測できるという珍しい機能があり、X線やガンマ線などのデータと合わせて複合的に分析することで独自の研究が可能となります。 私たちは、偏光(光の振動面の偏り)の研究にも力を入れています。夜空にある一定以上の明るさの星すべての偏光を分析し傾向を知ることは、天の川銀河の進化過程の解明にもつながります。そのような世界的発見となる観測結果を広島から発信できるよう、「かなた」の強みを生かした研究を展開していきます。ロマン溢れる謎がたくさんに広がる世界とは?星空のかなた「天文学」から専門分野 : 可視赤外線天文学かわばた・こうじ/広島大学宇宙科学センター長を務める。主に恒星の爆発現象や、爆発や恒星風による放出物質の銀河スケールでの進化現象を研究している。地球外生物が見つかる可能性もX線やガンマ線の観測で星の爆発を捉える世界的な大発見を広島から発信したい東広島天文台に設置されている「かなた」望遠鏡宇宙科学センター川端 弘治 教授11

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