HU-plus(Vol.1)2016年11月号
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  東広島市の“広報「東広島」”は、A4版36ページのけっこうボリュームのある広報紙です。オールカラー、月1回発行。これを山田さんともう1人の担当者と2人が中心になって担当しています。 「毎年、会議によって1年間の特集の方向性が定まるのですが、どこの誰に取材に行き、どんな話を聞くのかという具体化は私の部署がしています。また、特集の他に、東広島市の各部署からの情報を、紙面に収めることも仕事の一つです。この情報を分かりやすく伝えるためにはどういったことを載せる必要があるのかを考え、各部署から届いた原稿を書き直したり、削ったりといった、手直しをしています」 学生時代の専門は生命科学の研究という典型的な理系女子。それが今ではカメラを首から下げ、腕章を巻いて、東広島中を走り回ります。取材も撮影もライティングも全部自分たちで対応します。入稿が近づけば、赤ペン握って毎日遅くまで校正作業。広報紙が納品されれば、市内8万2000世帯と事業所を合わせて約9万部の配布の段取りまで自分たちで。まさに1年中、“広報「東広島」”漬けなのです。「東広島で一番いい時代を過ごさせてもらった。だからこの街に愛着があります。東広島をかけ回っていると、ここが故郷なんだという気もしてきます」 市政情報課に配属されて3年目。昨年まではケーブルテレビの市政情報番組の企画なども担当。どちらにしろ、大学時代の専門とは完全に毛色が異なります。では、大学時代に学んだことや学生生活の経験は今の仕事のなかでどう活かされているのでしょうか。 「私は、総合科学部のなかでも、生化学に関する研究をしている山崎岳先生の研究室に所属し、ヒトの副腎皮質細胞内でのホルモン合成について研究していました。研究する上で重要なのは予備実験と材料。広報の仕事でも実験を通して学んだことを活かして、本番である取材の前に協力してくださる相手方について勉強して、あらかじめおおまかなストーリーやカメラの構図を考えて臨んでいます。また、私は在学時、バレーボールサークル『ALL ROUND』に所属していました。3年のときには、女子キャプテンとして20人ほどのメンバーをまとめていたことを通して、人間関係を円滑にしていく力を身に付けたと思います」 広大から離れて4年半になる山田さん。外から見て、広大はどんな大学に映っているのでしょう。「ここがええね!」と感じるところはどこにあるのでしょう。 「広大生や広大の先生方は活躍している人が多いと思います。広報紙では、各方面で活躍している人をよく取り上げますが、『また広大か』と言う人もいるほど、頻繁に広大にゆかりのある人が登場します。私も取材を通して、広大生から刺激を受けて、モチベーションが上がることもよくあります。そんな、広大の『人』はとてもすばらしい財産だと思います。 しかし、広大生に言いたいことが一つだけあります。それは、英語から逃げないでほしいということです。私が在学中、講義の最中に英語のスライドが出てくるだけでその講義を敬遠する学生もいました。私は、大学院では他の大学へ行ったのですが、そこでは留学生がたくさんいて、研究のディスカッションから雑談まで、いつも英語でコミュニケーションを取っていました。もちろん最初から完璧には英語が話せませんでしたが、少しずつ英語での意思疎通ができるようになりました。世界大学ランキングトップ100入りを目指して、『スーパーグローバル大学創成支援事業』に採択されたのですから、もっと英語でコミュニケーションを取るような環境になれば、さらにグローバルな大学として広島大学が光り輝くのではないでしょうか」取材される機会はあまりないという山田さん。「学生からの取材は新鮮で、とても刺激になります」市民からは写真についての感想を聞くことが多い。逆に記事は読まれていないのかと不安になることもあると山田さん。「理想の広報紙は?」の問いに、次のような答えが返ってきた。「いま必要な情報と、いずれ必要になる情報がバランスよく載っていることじゃないでしょうか。ページをめくっていろいろイメージを膨らませてもらえる広報紙、ちゃんと情報の届く広報紙を目指したいですね」取材時に、『広報東広島の取材です』と言うと、『あの広報紙か!いつも読んでいるよ!』と反応されることがあり、私が作ったものが愛されていると思うととても嬉しく感じます」024024

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