HU-plus(Vol.1)2016年11月号
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 いま大学の置かれている環境を一言で表すとすれば、それは「競争」だ。他大学に先駆けて独創的な研究論文を発表しなければ、潤沢な研究資金を得ることができない。そして資金のあるところには優秀な研究者が集まる。 こうしたなか、広島大学が目指すのは10年間で「世界のトップ100大学」に入ることだ。英国の大学評価機関「Quacquarelli Symonds」(QS)が発表している「世界大学ランキング(2016-2017年版)」によると広島大学は日本の大学のなかでは12番目で、ランキングでは297位。100位はやや遠いようにも思えるが広島大学は「本気」だ。 広島大学の吉田総仁理事・副学長(研究担当)は「論文の引用件数などから研究力を客観的に評価した指標によると、広島大学は宇宙科学、再生医療・ゲノム編集、材料科学・機械工学などで世界的にも高く評価されている。この強い面を生かし、弱点を克服するなど、研究大学としてのパフォーマンスを上げていけば、目標も視野に入ってくる」と話す。 こうした広島大学の取り組みをサポートするのは、2013年に文部科学省が発足させた「研究大学強化促進事業」だ。高い研究力を持つ大学や機関に対して、マネジメント人材の確保や環境改革といった研究力強化への取り組みを10年間支援する。 広島大学の取り組みも認められ、この事業への採択が決まったが、事業への応募は大学の研究体制を見直す大きなきっかけにもなったという。吉田理事・副学長は「研究論文や科研費の採択など客観的な指標については自信があったが、課題は研究力の強化を具体的にどう提案するかだった」と話す。 広島大学では、学内を徹底的に検証。どのように改革を進めるのか知恵をしぼった。例えば、論文投稿の分布を調べたところ、どんな分野も50%の論文はわずか10%の人によって書かれていることが分かった。教育も重要だが、研究を中心としている人の層を厚くしないと世界のトップ100になれないというわけだ。このほか研究者の時間の使い方、研究者コミュニティー・ネットワークの状況などさまざまな領域を調査し、研究力強化の取り組みを提案。それが現在の広島大学の改革の「土台」になったという。 2012年より行われてきた研究体制の改革は、「研究推進機構」が全学の組織として中心になってすすめられるが、重要な取り組みの一つがURA(University Research Administrator:研究活動のマネジメントを行う人材)の組織化による、研究者を支援するシステムだ。URA月刊誌「日経サイエンス」は、科学・技術に関する話題の最新情報と知識を専門以外の読者にわかりやすく解説しています。研究者、ビジネスパーソン、学生が、科学技術の世界の視野を広げるために購読しています。2016年9月に創刊45年を迎えました。SPECIAL REPORT世界のトップ100大学に向けて挑戦する広島大学の取り組みをシリーズで紹介し、将来性を探っていきます。吉田総仁 理事・副学長(研究担当)広島大学が主体となって開催した「国際神経精神薬理学会(CINP)第30回世界大会」013

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