ブックタイトル東日本大震災・福島原発災害と広島大学

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概要

東日本大震災・福島原発災害と広島大学

61①専門家として被災者の健康を支えて大学院医歯薬保健学研究院 応用生命科学部門 成人看護開発学 教授 森山美知子 日本プライマリ・ケア連合学会・東日本大震災プロジェクト(PCAT)の医療スタッフの一員として宮城県、福島県で活動を行った。 平成23 年6月~9月、宮城県石巻市の石巻ロイヤル病院内SSB(Short Stay Base)の感染症発症者の隔離避難所において、入所者に対して二交代24 時間の看護を実施した(主たる実施者:当研究室大学院生 水川真理子)。感染症の看護のほか慢性疾患管理、リハビリテーションを行い、加えて、避難所から仮設住宅への円滑な退所に向け、MSW と連携し、調整を行った。うつ・PTSD スクリーニングテストも実施し、専門的ケアの補助を行った。 平成23 年8月~平成24 年1月、広島市社会福祉協議会がボランティアを募り、福島県南相馬市の仮設住宅を訪問し、被災者の方々に対して、さまざまな活動を実施した。その傍らで、住民の健康チェック・健康相談を実施した(約9割の住民が参加)。バイタルサイン、血糖測定のほか、主訴を聞きながら全身のチェックを行い、異常の早期発見に努めた。震災の影響に加え、以前から慢性疾患を有する人が多く、療養に関して指導を行うと共に、異常がみられた方は、地域の保健師につなぎ、適切な医療機関への紹介を行った。 「血圧を測って」と順番待ちの合間、ぽつぽと被災当時のこと、離別・死別した家族のこと、将来の不安、福島原発事故から逃れる際の苦難などを話されるのが印象に残った。 平成24 年1月7、8日に従来の病院(入院)機能を果たせなくなり、外来と訪問看護中心に運営形態の変更を余儀なくされた宮城県気仙沼市の本吉病院の看護部を訪問し、問題点の聞き取りと対応策の提案を行った。 平成24 年4月1日~平成25 年3月31 日、宮城県亘理郡山元町に保健師(看護学専攻卒業生 加門葉月)を長期派遣(年賀寄附金助成)。生体センサ遠隔モニタリングシステムを用いて、広島(霞キャンパス)と現地で、仮設住宅・在宅被災者健康管理を実施した。また、加門は地域包括支援センターの補助スタッフとして、家庭訪問を行いながら、現地の人員の不足を補うための業務を行ってきた。補助業務を行いながら、現地のベテラン保健師に指導を受け、随分と育てて頂いた。 クリスマスの時期には、広島大学附属小学校、附属東雲小学校の児童が約1000 枚のクリスマスカードを作成、被災者の方々に郵送してくれ、地域で話題になるほど喜ばれた。これがきっかけとなり交流も生まれている(年賀寄附金助成)。 仮設住宅は交通アクセスの悪い隔離された場所に建てられており、部屋は非常に狭く、プライバシーも確保されない状況にある。家族はばらばらになり、仕事も失い、これまでの日常も破壊された中で、活動を作り出すことは非常に困難で、「生活を取り戻す」ための根本的な支援がなければ解決に至らない。動くことが必要と誰もがわかっていても、そこに関われないもどかしさが募る。 また、医療施設などのハードが崩壊した中で、新しいケアサービスを構築したいと意気込みながらも、人々の関心やニーズに合わせた方向への軌道修正を常に要求される。常に関わることのできない広島の地からの支援に限界を感じている。南相馬市仮設住宅集会所での健康チェック