ブックタイトル東日本大震災・福島原発災害と広島大学

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概要

東日本大震災・福島原発災害と広島大学

60第4章 全学に広がる震災への取り組み①専門家として壊滅免れた大船渡病院で調剤を支援病院薬剤部 薬剤主任 泉谷 悟 岩手県立大船渡病院にて院内調剤の業務支援を行った。大船渡市と隣の陸前高田市は地震後の津波被害により、市街地はどちらも壊滅的な被害を受けた。山の中腹に位置する県立大船渡病院は唯一被害を免れた病院で、地域住民の患者集中により、その業務量は許容範囲を超えていた。市中には院外処方箋を応需できる調剤薬局はほとんどないため、すべての処方を院内で調剤するような状況であった。 3日目の平成23 年4月7日の深夜に震度6 弱の余震があり、直後からその余震による傷病者の受け入れ準備を行った。待合室のソファーのリクライニングを倒し簡易ベッドの作製や、必要となる輸液や救急医薬品を準備し、その状態で数時間待機した。幸いにも来院する患者はおらず、翌朝より通常通りの診療が行われた。しかし余震の影響により、岩手県内全域で停電となったため、電力が復旧するまで、院内全体が大混乱であった。 食糧は不足していたが、電気・水のライフラインは復旧しており、また仮眠室として病院会議室があてられ、マットレスと毛布が支給されるなど、比較的恵まれた条件であったと思われる。 困った事としては、現地へ入るための情報が大変不足していたことである。岩手花巻空港から大船渡病院までの距離は約80km あるが、交通手段の有無、空港から病院までの幹線道路の状況、ライフラインの復旧状況など正確な情報が伝わってこなかった。また誰に聞いたらよいのかも全くわからない状況であり、情報収集が大変困難を極めた。 地方に支援に行く場合、現地での主な移動手段は車となるため、レンタカー(移動手段)の確保が大切である。しかし現地では津波によって自家用車を流された方がレンタカーを借りておられ、応援部隊が予約できるレンタカーの台数がわずかで、確保することが非常に大変であった。 災害援助は自己完結型が基本であるが、飲料水が現地で確保できるのであれば、荷物の重量がかなり軽減され、長期の応援が可能となると思われる。今回は情報不足で広島から飲料水も持参したため、非常に重い荷物を持っての移動となり負担であった。 情報源(今回の場合は医薬品集)として、電子辞書やタブレット型端末は非常に有用なツールであった。公衆無線LAN などインターネット接続が可能であれば、より多くの情報が入手できる(もちろんバッテリーの確保が必要)と感じた。傷病者の受け入れ準備(筆者撮影)