ブックタイトル東日本大震災・福島原発災害と広島大学

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概要

東日本大震災・福島原発災害と広島大学

58第4章 全学に広がる震災への取り組み①専門家として放射能汚染調査と情報公開の継続を大学院工学研究院 エネルギー・環境部門 教授 静間 清1.東広島キャンパスにおける大気中放射能の測定 福島原発事故では1、3、4号機で建屋爆発、2 号機で圧力抑制室の爆発が起こり、福島県内に甚大な放射能被害をもたらした。われわれは工学研究科放射線総合実験室で平成23 年3 月20 日から大気ダストの捕集を開始した。3 月31 日に131I を初めて検出後、4 月7 日まで急激に上昇。検出された核種も137Cs,134Cs, 136Cs, 132Te と増えたが、検出された空間放射線量はわずかであった。情報は危機管理・災害対策本部に報告され、4 月5 日に広島県と広島大学が共同で記者発表した。 4 月中は微量の137Cs, 134Cs が観測されたが、5 月以降は検出されなくなった。測定データは大学ホームページに掲載した。大学からの情報発信は地域の人々の不安解消に役立ったと思われる。 2.福島の環境試料の測定 3月15 日に木村真三氏(現獨協医科大学准教授)とNHK 取材班が福島第一原発の1.7km 地点まで入り、さまざまなサンプルを採取した。試料の一部が当研究室に届けられ、測定を依頼された。ゲルマニウム検出器を用いたγ線核種分析と、白菜、松葉、キノコ類についてオートラジオグラフィーを行った。測定結果は5月15 日にNHK テレビ「ネットワークで作る放射能汚染地図」でも紹介された。放射能汚染についての情報は出来る限り早期に公開されるべきであり、一度きりの情報提供でなく継続的な活動が必要である。3.尿バイオアッセイによる内部被ばく線量の推定 5月5日に鎌田七男氏(広島大学名誉教授)と斉藤 紀氏(福島わたり病院)は福島県飯舘村および川俣町で16 人(大人11 人、子ども5人)の尿を採取した。ペットボトルに入った尿が当研究室に持ち込まれ、γ線測定を依頼された。その結果、16 人全員から137Cs, 134Cs が検出された。さらに5 人の尿からは131I が検出された。 5月30 日にも鎌田氏らは同じ16 人に対して再度、尿の採取を行った(1人は辞退)。2度目の測定では137Cs, 134Cs は検出されたが、131I(半減期8日)は検出されなかった。 鎌田氏らは住民の活動(屋内外での滞在時間など)の聞き取り調査も行ったので、セシウムによる内部被ばく線量の推定と、131I の検出者については甲状腺被ばく線量を推定した。調査は学内倫理委員会の承認を得て行い、学術論文として結果を発表した。福島事故で甲状腺被ばく線量を測定したデータはほとんどない。ホールボディカウンターによる測定も遅れた。尿バイオアッセイによるデータは実測された貴重なデータとなった。3~4月にもっと多くの尿採取が行われていれば、より多くの人々の甲状腺被ばく線量推定が可能であった。4.母乳測定 市民グループの依頼で9 月に福山市に赴き、市民の方々の簡易線量計と、持参したシンチレーションサーベイメーターの比較校正を行った。保育園の園長さん2人が来られていてミルク、野菜など給食に使う食材約40 種類の測定を依頼された。結果的に有意な放射能を含むものはなかった。 その時、参加者から「福島から広島に避難している