ブックタイトル東日本大震災・福島原発災害と広島大学

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概要

東日本大震災・福島原発災害と広島大学

51④縁の下を支えて                   各機関をウェブ会議システムで結ぶ病院集中治療部 助教 貞森拓磨 震災発生の翌日より、広島大学病院に設置された緊急被ばく対策委員会で、主に広域搬送受け入れに伴う関係機関の調整などを行なっていた。調整中、先方からは「どの位の傷病程度の患者が、何人ぐらい?」と聞いてくるが、それに対し「全く想定できてない」と答えるしかなかった。現地からの必要な情報が入ってこないからである。発災から数日間での会議では「誰々に連絡したら今日は何をしていた」という報告が羅列されるのみで、放医研からの情報も断片的なものが多かった。未曽有の大災害に直面しているせいもあるだろうが、そもそも平素より定期的な連絡をするように訓練されていないのも問題だった。 私が福島に派遣されたのは平成23 年3月19 日。主に福島県庁に設置されたオフサイトセンター(OFC)の医療班として活動した。次々に配布される紙の資料の山にうんざりしながら、持ち込んだスキャナーでせっせとPDF 化し広大に送っていた。むしろ情報過多になることがわかっていたが、自分で判断するわけにもいかず、そうするしかなかった。各機関の情報共有手段としては、東電のみがビデオ会議システムを導入しており、22 日の夜、医療班でも「放医研で行われている会議をどうにかして見ることができないか?」という話になった。簡単にできる感じはしなかったが、「なんとかします」と言って翌日、福島を後にした。 23 日、東京で借りた通信機器等のお礼と返却で各社を回っていると、日本テレビでシスコシステムズがWebEx というビデオ会議システムを無料で利用させてくれるという情報を紹介された。仕組みを確認し、「これだ」と思った。PC、iPhone やiPad などの簡単に調達可能な機器を利用し、ネットにさえつながれば場所は問わず、電話で音声のみの参加も可能、次々に変わる利用者への説明も簡単で、セキュアな環境も提供されるという、現状の課題をほぼクリアしていた。 24 日の緊急被ばく対策委員会で現場のニーズと、WebEx の説明を行い導入の了承を得た。25 日には、広大と放医研でビデオ会議を行い、26 日18 時30 分、広大、放医研、OFC の3 者で第1 回目のWEB 会議が行われた。会議ではOFC からは医師が当日の活動報告を行うこと、定期的に情報交換するためにWeb 会議を行うことが決まった。OFC で話が出てから約90時間後のことだった。その後、Jヴィレッジ、救急医学会なども参加するようになった。今後は、インフラの損壊程度を段階的に想定し、様々な情報共有手段を構築しておく必要があると考える。ウェブ会議の様子(広島大学病院)