ブックタイトル東日本大震災・福島原発災害と広島大学

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概要

東日本大震災・福島原発災害と広島大学

48第3章 被災地に寄り添う③原発内の救急医療室 東日本大震災の特徴は、地震の大きさに加えて、津波による被害および福島第一原子力発電所の事故である。三次被ばく医療機関である広島大学は、DMAT活動および緊急被ばく医療活動として、震災対応の中でも、特に原子力発電所の事故に対する対応を中心に行ってきた。私は広島大学の職員として、発災直後から現在までDMAT、自治会館・OFC、Jヴィレッジ、一時立入、救急医療室などで活動を行った。1)DMAT 活動 発災当日DMAT 活動に厚生労働省より、全国のDMAT に出動要請があり、二本松市の男女共生センターに向かった。そこには、病院からの被ばくの可能性がある避難患者約120 人が収容されていたため、それらの患者の中で、重傷者のスクリーニングと転院、ならびに独歩やヘリなどで搬送されてきた住民の汚染スクリーニングを行った。 最も印象に残っていることは、被ばくの可能性のある患者とともに避難して、センター内に収容されていた若い女性看護師が自分も被ばくの不安と闘いながらも、患者さんのために仕事をしていた姿であった。その看護師は私に「将来自分は子供を産むことができるのか」と聞いてきた。発災直後は、医療従事者を含めた住民全員が不十分な情報、知識から見えない放射線に脅えていた。放射線と救急医療の知識を生かす病院集中治療部 講師 岩崎泰昌2)福島県オフサイトセンターでの活動 オフサイトセンター(OFC)とは原子力災害時に原子力災害対策特別措置法第12 条に基づいて設置される緊急事態対応対策拠点施設である。各機関が一堂に会し、連携のとれた応急措置などを講じ、原子力防災対策活動を調整し円滑に推進するための組織である。 オフサイトセンター内で医療班の一員として、各機関と連絡を取りながら、住民や発電所作業者の安全などについて検討、調整を行った。災害医療で重要なことは、指揮命令系統つまりコマンドとコントロールといわれる。災害時には物事を速やかに決定することが必要であり、それには決定権をもった各機関の代表が一堂に会しておくことが非常に有効であると感じられた。3)福島第一原子力発電所救急医療室での活動 現在も発電所内では1日2,000 人以上の作業者たちが事故の収束に向けて作業を行っている。一方で20km 圏内は避難区域であり、発電所で何か事故があって119 番通報を行っても救急車は来ない。 この事態に対して平成23 年7 月より発電所内の建物を利用して、診察や処置ができる救急医療室を整備し、常時医師1人、看護師1人、放射線技師1人が24 時間体制で常駐し、事故時の対応や作業者の健康管理を行っている。放射線の知識と救急医療の知識が必要であり、まさに広島大学救急医学教室が担当すべき任務である。 最後に震災からすでに2 年近くが経過しようとしており、人々の意識からもその記憶はやや遠ざかってきている。しかし現地では、まだ元の生活に戻れない人もたくさんいることを、福島第一原子力発電所へ向かうため避難区域内を通るたびに感じる。すべての人が震災前の生活に戻れるまで、広島大学はずっと支援を続けていくだろうし、私も広島大学の職員の一人として今後も福福島第一原子力発電所内救急医療室。 島へ行き、少しでも復興の役に立てればと思う。救急対応ができる設備を備えている